内容説明
“戦争に必ず勝利する”という東条英機首相の誓いも虚しく、戦局は悲劇的な様相を呈した。倒閣への動きも起こる中、乗り切る策を模索する東条。だが、戦力には天地の差があった。一刻も早い和平工作に向けて、またも米内光政に入閣の要請が…。二〇〇万名の将兵が生命を落とした先の大戦とは何だったのか。不世出の軍人の生涯を通して描く日本と日本国民の本質。
著者等紹介
阿部牧郎[アベマキオ]
1933年、京都生まれ。京大仏文科卒業後、会社員生活を経て文筆活動に入る。88年、『それぞれの終楽章』で第九十八回直木賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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シロー
2
元々開戦派ではなく近衛達の尻拭いを天皇への忠誠心だけで続けていた東条が辞意を伝えた際、心を折るような「あ、そう」から天皇は既に戦争に已んでいたのかなとか色々考えたのに最後にまさかのオチがつくとは… 神風特攻隊に憤って終戦を主張した井上次官が最もまともな考え方だと思う。近衛は兎も角、米内にはもっと終戦を早める手立てがあったのではないか。でも、原爆を二つも落とされても「一億玉砕」を叫んでるような連中相手では難しいのかな。この時代に興味はあっても中々とっつき辛いものがあるので、小説という形で纏めて頂き感謝です。2016/02/07
ちゅんぴん
1
この本に限らず、太平洋戦争末期頃の国がボロボロになっていく様は読んでいてつらい。明治維新から太平洋戦争が終結するまで、日本がどういう国体で、どういう精神的な背景が有ったのかを確りと理解し、何故負けると分かっていた戦争に突き進んだのかをきちんと学び、考えることが大事だと思う。中高の授業ではすっ飛ばされることが多い時代だけど、この歴史が有ったことを理解することが本当に今後の日本の在り方を考える上で重要になるでは。2015/01/26
Tetsuto
1
今からすると、アメリカこそが国内世論に逆らってでも参戦したかったことがわかる。戦争回避したかったのは日本の方。しかし当時としては、タイトルにもあるように万世一系の天皇を君主とする神の国(国体)を守るために戦争を選んだ。神風特攻隊の若者の命よりも、天皇を守れるかどうかに最後までこだわり被害を大きくした。尊王攘夷で成立した近代日本の宿命としか言いようがない。戦後、天皇を見た国民が「一人の中年の男」にがっかりする。この人のために多くのが命を捨てたのかと。ここから戦後日本の精神的空白が始まったと思われる。2014/10/19
羽衣伸隆
1
戦争を終わらせることがこれほど難しいのか?責任の所在はどこに?と、歴史的な結論を知っていながら、半ばイライラさせられる展開になる。身分も権限もある人物が、最後まで「負けを認めることができず見苦しい」姿が次々と描かれる。そして改めて考えさせられる指導者の資質の見極めとその難しさ。今の日本は、この先どこに進んでいるのか?先の大戦も少なくともその原因は明治維新にまで遡ることになる。でもそれがあれほどの悲惨な結果を招くとは維新の当事者は想像が及ばなかったであろう。今の決断が100年後にどういう結論につながるのか?2014/08/31
千田義則
0
【再読】【一言】テレビで「日本のいちばん長い日」が放映されていて読み返したくなり再読。映画では米内光政、東条英機が主人公ではないが・・・。下巻では、東条が首相・陸相・参謀総長・軍需相を兼ねる辺りから終戦までの流れが史実に基づいて一通り理解できる。文章も現代風で非常に読みやすい。2016/08/22