内容説明
“海軍の暴走を防ぐため大臣に”ロンドン軍縮条約締結を機に、国内でテロが続発。不穏な動きを抑えてほしいという打診を米内光政は拒絶する。一方、東条英機は関東憲兵隊司令官に就任、満州に君臨した。列国が戦争に突き進む中、二人が目指すものには大きな隔たりがあった。陸軍と海軍の対立は解消されず、やがて対米交渉は破綻する…。昭和前期の日本の栄光と悲劇。
著者等紹介
阿部牧郎[アベマキオ]
1988年、『それぞれの終楽章』で第九十八回直木賞を受賞。幅広い分野で精力的な執筆を続ける。1933年、京都生まれ。京大仏文科卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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James Hayashi
13
今まで知る東条英機は開戦に結びつけた悪玉でしかなかったが、不器用なところはあったかもしれないが、努力家で秀才で切れ者であったことを知った。歴史書ほどでないが時系列に書き連ねたストーリーで、二人の軍人を深く掘り下げておらず面白みはない。この巻はガダルカナルの戦いまで。下巻へ。2015/12/18
シロー
1
米国が開戦の意思を固めているのでもはやどんな交渉も無駄な訳だが、それにしても陸海軍共に大局的見地は疎んじられ目先の利のみ追求する烏合の衆が国を絶望的な方向へ進めて行く様に恐怖感。全ての元凶は満州事変にあるのではないか。天皇は聡明で平和を望む的に描かれているが、勝手に軍を動かしたことに激怒しても領土が広がるとお咎め無し。これで何をやっても結果オーライで許される空気になり組織の箍が外れてしまったように思える。相変わらず新聞も世論も戦争上等状態のようだがその点が説明不足。当時の新聞の論調等も記述して欲しかった。2016/02/04
ぱぱみんと
1
日本を戦争に駆り立てた経緯が、人物の姿を借りて、丁寧に語られています。でも、やはり日本の指導者の立場から見たものの見方でしかないのですね。これをアメリカや他の国の人たちから見たら、日本の姿はどのように見えたのでしょうね。2015/01/24
Tetsuto
1
日独伊三国同盟を結ぶか否かが日本の命運を分けた。ドイツを選んだのは、簡単に言えば勝ち馬に乗りたいだけの話。A級戦犯の板垣征四郎は人間的には立派な人物であったという評価がある一方、石原莞爾と満州事変を起こした割に名前があまり知られていない。板垣個人の思想や理念というものがなく魅力が感じられないからかもしれない。この作品は小説ではあるが、海軍善玉説も陸軍最強説もどっちも偏った考えであることを示してくれる。開戦を決意するまでの東条英機には何ら落ち度や私心も見当たらない。2014/10/19
羽衣伸隆
1
ここでは当時のマスコミの報道と、それに熱狂する当時の一般国民の姿があり、決して先の戦争は軍と政府だけが突き進んだのではないことがわかる。情報が制約されていたとは云え、国民は決して被害者ということではなかったということか・・・。そして現代ではタブーとなっている天皇の戦争責任・・・。ただ、止めることは本当に難しかった、その時代に生きていたら果たして自分は何ができていたのか?「あんな戦争は今の日本なら二度と起こらない」とは決していえないことがわかる気がする。 2014/08/23