内容説明
東京・丸の内の片隅にある小料理屋「ばんざい屋」。女将の作るちょっぴり懐かしい味に誘われて、客たちが夜な夜な集まってくる。クリスマスの嫌いなOLの悩み、殺された常連客が心ひそかに抱いていた夢、古い指輪に隠された謎と殺意…。数々の人間模様をからめながら、自らも他人にいえない過去を持つ女将が鮮やかに解決する恋愛&ヒューマン・ミステリーの傑作。
著者等紹介
柴田よしき[シバタヨシキ]
1959年、東京生まれ。95年に、『RIKO―女神の永遠』で第十五回横溝正史賞を受賞し作家デビュー。以来、ミステリー、ホラー、伝奇とあらゆるジャンルで精力的に作品を発表し続けている
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
473
柴田さんは、かつて読んだ『ゆび』の中途半端なミステリー感が合わずに遠のいていた。が、「高原カフェシリーズ」や、この作品のようなグルメを絡めた作品となると、彼女の巧さが俄然引き立つ。手間のかかりそうなおばんざいたちも立派なモチーフ。自分では敷居の高い食材だからこそ小説の中で出会えるのは嬉しい。栗おこわだとか、ヤマボウシを入れた吉野葛だとか。おばんざいと食器の組み合わせを考える女将の様子が、女性作家らしく好ましい。一編ごとがユルいミステリーになっており、終焉に向け女将の過去が明らかになる構成。このまま続編へ。2019/11/21
おしゃべりメガネ
206
勝手にジャンル分けするわけではありませんが、「お料理ミステリー」です。主人公のおかみのキャラが本当にミステリアスで魅力的ですし、支えるサブキャラも素晴らしいです。自分、料理はからっきしなのでその部分はノーコメント?ですが、ミステリーとしての展開も話の軸もブレず、楽しめました。元気になる小説とは言い難いですが、少しココロがマイナス傾向にあるときにアロマ的な感じで、効果をもたらせてくれるのではないかと思います。ボリュームもそんなになく、短編集なので気軽に手に取ることができるのではないでしょうか(^v^)。2012/10/27
じいじ
105
おいしい料理には箸が進み止まらなくなりますが、今作がまさにそれ。ミステリー・タッチの恋の物語は面白く、先が気になって読み止まれなくなります。丸の内のビルの谷間にひっそりと佇む小料理屋「ばんざい屋」を舞台に繰り広げられる人間ドラマは、とても読み心地がいいです。口が堅い女将の気遣い、逞しさに魅了され、一度訪れたら通いつづけたくなります。美味しそうな料理に何度も生唾を飲み込みました。続編『ばんざい屋の夜―竜の涙』をスタンバイしました。2019/04/10
takaichiro
103
良本です^_^前半は四季折々の素材を生かしたおばんざいを売りにする居心地の良い居酒屋の女将と常連さん達のほろ酔いトークとライトな事件のジャブが続きます^_^ヨダレダラダラの美味しい料理小説と思いきや、いつも愛想を振り撒く女将が抱える複雑な過去とその結果の現在が徐々にクローズアップされる^_^美味しくて、そこに居ると自然と楽しくなるお店との出会い。時間を追うごとに、その雰囲気を醸し出す根が、苦労しても真面目に明るく生きようとする人間の迫力にあることがわかってくる。あの頃よく飲んでたなぁ^_^懐かしい^_^ 2019/07/23
hirune
101
続編を読んだので再読。親子であろうとなんであろうと縁がないということはある。そして想いがあればいつかどこかで自然に繋がることもあるということでしょう。女将の誰の事情も自然に受け入れてさりげなく良い方に持っていく度量の広さがとても良いです。最後の醤油差しを放りだしての きゃあ!は居合わせた人全員が惚れちゃうんじゃないかな(*^^*)あー、こんなお店通ってみたいものだ。2017/02/23