内容説明
ベストセラー作家が待ち望んだ最高の聖夜がとんでもない惨劇に。人喰い給水塔を見学した元判事の脳裡に去来した恐るべき真相。夫と親友の浮気を知った妻がとった意外な行動。顔さえ知らない父の突然の訃報に直面した母娘の胸中。七年ぶりに再会した憧れの女性と奇妙な殺人事件…。十人の人気作家が不可思議、不条理な事件を描く珠玉のミステリー・アンソロジー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
りゅう☆
86
素敵なクリスマスの予定がこんなに人が死ぬとは…(山口雅也)、火村助教授の暗号を拾っていく推理力はすごい!シリーズ読んだことないけど(有栖川有栖)、「今日はお天気だから」と保健の先生ってもしかして…(加納朋子)、督促状から見えた女の腹グロさに、もうどうでもいいよという気になったけどシリーズ物なら読んでみたい(西澤保彦)、『六番目の小夜子』の関根父が給水塔の謎を解く(恩田陸)、猫と父と家族の繋がりにホロッ(倉持淳)、泥棒嫁業は向いてないのでは?(若竹七海)、共感しがたい愛情表現故の殺人に…(近藤史恵)→2016/03/31
KAZOO
70
海外の作品にはよく不条理な感じの事件が起きてそれを解決する話が出てきますが、この作品集は日本人作家の手になるもので、若干出来の良しあしはあるものの楽しめました。山口雅也の作品などは本当に不条理という言葉がぴったりです。それと恩田陸さんの作品も私には好みでした。2015/07/08
HANA
63
ミステリアンソロジー。不条理といいつつミステリっていう形式上、理から離れた話はなく、どちらかというとイヤミスみたいな話が多い印象。あとテーマ的に機械的トリックを使ったものもなく、心理描写から現実の裂け目みたいなものが見える話が多いかな。それでも各著者の特徴が出ている話ばかりで面白い。山口雅也はコントみたいだし有栖川有栖、西澤保彦は極めて王道。加納朋子は一見日常ものだがそこに潜む悪意を描く一味違った作風。恩田陸は幻想、柴田よしきは嫌な読後感と、こう見ていくとミステリの裾野って本当に広いことが実感できるなあ。2016/03/22
さっちゃん
61
既読作品あり、初読み作家さんありだったけど、バラエティに富んだアンソロジーで楽しめた。執筆陣がなんとも豪華! さすがに恩田さんは読ませるなぁ~ということで、「給水塔」がマイベスト。2019/09/04
スカラベ
59
出だしの作品は、山口雅也「モルグ氏の素晴らしきクリスマス・イヴ」。次から次へと不条理が連鎖し死人が積み重なり・・締めくくりは悲惨ながらクスリとさせられる。恩田陸「給水塔」は、人喰い、鬼といった不気味な言葉が飛び交う。真実を求め心をざわつかせながら迷ううちに・・最後に辿り着く解はまさに愕然。加納朋子「ダックスフントの憂鬱」ではなぜか足だけを傷つけられる猫の謎を解く。背の低い自身をダックスフントに例え、自虐的な思いに捕らわれる主人公高志。最後にはその活躍が報われる。そう、ダックスフントはもともとは猟犬なのだ。2019/02/03