内容説明
「逮捕する?誰がだ」「ゲシュタポがだ」一九三九年、第二次大戦前夜の暗雲たれこめるドイツ。出張中のロンドンの若き敏腕銀行家、トーマス・リーヴェンは、突然無実の罪で逮捕された。「なぜ、私を…」窮地に追い込まれたリーヴェンだったが、ゲシュタポは、釈放するかわりに法外な条件を突きつけた。これが、悪夢とも呼ぶべきスパイ生活の始まりだった…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Panzer Leader
55
時代はWWⅡ開戦前イギリスに居住するドイツ人銀行家リーヴェンは英独仏の諜報機関に目を付けられ図らずもスパイとしてリクルートされる。若くてイケメン女性にはモテモテの上料理の腕も超一流の彼は、敵味方に拘わらずどんな人をも殺めたくない平和主義を信条にスパイとして活動しながらも各諜報機関を手玉に取る縦横無尽の活躍ぶりを見せる。シリアスな世界を題材にしながらちょっとご都合主義な話の筋とも思えるが、「007」+コミック「ザ・シェフ」にドートマンダー・シリーズをスパイスしたようなユーモアスパイ小説。2020/06/11
seacalf
36
どうしようもなく鬱屈がたまった時は娯楽小説を読むに限る。それも大昔のスパイ小説なんかが肩が凝らなくていい。主人公トーマス・リーヴェンは美食家でチャーミングなイケメン。そして絶対に人を殺めない。息も絶え絶えの大ピンチに台所に立ち、自分の敵達に料理を振る舞う。なんというユニークな展開。『いやいや、それどころじゃないのにまた料理を作るのか笑』とニヤニヤしちゃう。カルメンのような荒々しくも抗えない魅力を備えたシャンタル・テシエ他美しい女性達に、頼りになる相棒バスチャン、脇役もいい味出している。非常に楽しい作品。2018/02/28
ももせはる
10
007やmission impossibkeなどスパイものというのは、いつでも僕らの心を踊らせてくれる。中でも、本書は開高健のおすすめの一冊だけあって実に素晴らしかった。平和を愛し、最高にジェントルマンでチャーミングな主人公が戦争の中で運命に翻弄されつつも、幾多のピンチを切り抜けていく様は見ていて清々しい。 この物語が他のスパイものと一線を画すのは、料理というエッセンスがふんだんに盛り込まれているところ。美酒佳肴の美味しそうな料理が登場し、読んでいるだけで食欲と冒険心が刺激されなんだか得した気分になる。2015/03/18
Hiroshi Asanuma
6
第二次大戦中のヨーロッパを舞台にしたスパイ小説。しかも実話らしい。このスパイが料理の腕が素晴らしく、あらゆる危機的状況を食事で乗り切るという展開が見事。また、やたら女にモテるときている。 食事のメニューとレシピがしっかり載っており読者を二重、三重に楽しませてくてれる。 下巻の展開が楽しみである。2015/04/15
ツカモトカネユキ
5
1970年発行。1981年訳発行。ドイツの人気作家の長編サスペンス推理小説。しかし、事件や犯人のからくりを解くという感じではありません。1957年からスタートしますが、本筋は、そこに至るまでが物語られます。時代は第二次大戦前、英国のドイツ人銀行家が策略に嵌り、スパイとして成長していき、各国で争奪戦が繰り広げられます。巻き起こされる事件も頭を捻ったもので楽しませてくれます。裏切り合いの狡猾な話ですが嫌らしさはありません。節々に登場する料理の解説も和ませてくれます。次の国での働きを期待しつつ次巻に続きます。2021/07/03