出版社内容情報
林望[ハヤシノゾム]
著・文・その他
内容説明
衛門の督(柏木)の病状はますます悪くなるばかりで、新年を迎える。源氏の正室女三の宮は、柏木との間に不義の子を生む。おさえきれない怒りとともに、人生の因果に愕然とする源氏。そして、ついに最愛の紫上に死が訪れる―。源氏、四十八歳から五十二歳まで。
目次
柏木
横笛
鈴虫
夕霧
御法
幻
雲隠
著者等紹介
林望[ハヤシノゾム]
1949年東京生。作家・国文学者。慶應義塾大学文学部卒、同大学院博士課程単位取得満期退学(国文学専攻)。ケンブリッジ大学客員教授。東京藝術大学助教授等を歴任。『イギリスはおいしい』(平凡社・文春文庫)で91年に日本エッセイスト・クラブ賞、『ケンブリッジ大学所蔵和漢古書総合目録』(P.コーニッキと共著、ケンブリッジ大学出版)で92年に国際交流奨励賞、『林望のイギリス観察辞典』(平凡社)で93年に講談社エッセイ賞、『謹訳 源氏物語』全十巻(祥伝社)で2013年に毎日出版文化賞特別賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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てらこ
16
柏木から雲隠まで。源氏に似ず、妻ひとすじで通してきた息子・夕霧のはじめての心移りにハラハラ。この時代、文のやり取りは連絡手段であり、恋の駆け引きの必需品。「昨日の夜出した文の返事が次の日になっても来ない!」とやきもきする様子を見ると、千年前も「メール返ってこない!」的なことがあったのかなーと思えて、親近感が湧く。 この巻を最後に源氏は物語の表舞台から姿を消すわけですが、最愛の妻・紫上に先立たれた喪失感を抱えながら、自らの人生の終わりへ向かっていく姿が悲しく美しかった。2020/01/24
LUNE MER
14
源氏物語・第二部完であると同時に光源氏もついに退場。紫の上を失った光源氏52歳の一年間を移り変わる季節の風物とともにドキュメンタリーチックに描く「幻」の帖。この帖だけ映像化してもかなり芸術的な作品に仕上がる気がする。さて、紫の上が亡くなったのは旧暦の8/14と明記されており彼岸にあたる(らしい)。当時は「彼岸は怨霊の命日である」とされており、逆もまた真なりということで「彼岸に亡くなると怨霊になる」と言われたらしい。某作品でそう書いてあったが他でその主張をまだ見たことない。しかしそう思って読むのもまた一興。2020/02/26
たかしくん。
10
この七巻では、源氏の出番がぐっと減ります。三の宮に手を出したことに良心の呵責にかられ憤死する柏木。そして、源氏殿は昔の藤壷の報いとばかりに「自分の妻の他人の子」を突き付けられてしまいますが、私とすれば、いい気味だ。と意地悪く笑ってしまいます!続いて、真面目で通っていた長男の夕霧が、親友柏木の未亡人落葉の宮に迫るところはむしろ微笑ましい。そして、この物語でこれまで最も美しく描かれてきた紫上も、皆さまに惜しまれながらご逝去。その後のまったりとした1年間を書き添えて、源氏も「雲隠」。2023/07/08
おとん707
9
前巻の感想でここが源氏の頂点かもしれないと書いたがそうだったようだ。ここに至り源氏の出番は激減。代わって表に出てきたのが源氏の息子の夕霧。生来の真面目男で色恋には縁がなかったようだがこういう男が大人になってから性に目覚めると始末が悪い。源氏の呪いで(?)死んだ柏木が遺した妻(しかも帝の皇女)をこともあろうにストーカーの上強姦。そうは書いてないがそうとしか思えない。源氏もワルだが息子は救い難い。紫上亡き後の源氏は今までの栄華から一転精気を失う。その悲嘆の日々が延々と綴られる。最後は源氏退場の暗示が…。2022/12/16
ケロ子
6
相思相愛の紫の上すら幸せにしない光源氏の一生って、いったい。源氏物語ってこんなにも奥行きがある物語だとは思わなかった。現代に通じる心情もたくさんあり、読まれ続ける理由がありすぎる。紫式部、天才だわ。2021/10/02