内容説明
源氏の説得で姫を紫上に託すことを決意する明石の御方。源氏の最愛の人・藤壺は源氏に見守られながら息を引き取り、冷泉帝は自身の出生の秘密を知ることとなる。夕顔の忘れ形見である玉鬘の発見。夕霧と雲居の雁との恋。そして太政大臣となった源氏は、広大な六条院を造営し、人生の栄華を極める。源氏、三十一歳から三十六歳まで。二〇一三年毎日出版文化賞特別賞受賞作品。
著者等紹介
林望[ハヤシノゾム]
1949年東京生。作家・国文学者。慶應義塾大学文学部卒、同大学院博士課程単位取得満期退学(国文学専攻)。ケンブリッジ大学客員教授、東京藝術大学助教授等を歴任。『イギリスはおいしい』(平凡社・文春文庫)で91年に日本エッセイスト・クラブ賞、『ケンブリッジ大学所蔵和漢古書総合目録』(P.コーニツキと共著、ケンブリッジ大学出版)で92年に国際交流奨励賞、『林望のイギリス観察辞典』(平凡社)で93年に講談社エッセイ賞、『謹訳 源氏物語』全十巻(祥伝社)で2013年に毎日出版文化賞特別賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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SOHSA
30
《購入本》源氏31歳から36歳まで、薄雲から胡蝶までの巻が収録。林先生訳の源氏物語は、読み手の眼前に鮮やかに映像が立ち昇ってくる妙がある。それほどまでに現代語訳に違和感がなく、するすると肚に落ちていく。源氏物語の壮麗さ絢爛さはある意味、バブル期の日本を彷彿させると言ったら叱られてしまうだろうか。もちろんバブル期のような下品さは微塵もないが、眩いほどのきらびやかさは相通ずるものがあるような気がしてならない。源氏の好色ぶりはいかに世に二人といない美男子とは言え目に余る。気の毒にも玉鬘の懊悩はいかほどだろう。2022/10/16
てらこ
17
薄雲から胡蝶まで。源氏も30代になりすこしは落ち着いてきたからか、その他の登場人物の話もいろいろ出てきて読み応えがあった。源氏の息子の初々しい恋模様や、亡き恋人の忘れ形見である玉鬘の逃避行、など緩急あって面白かったです。でも最後の最後で源氏の悪癖が…!かわいい玉鬘の今後を心配しつつ、2019年読み納めになりました。2019/12/31
たかしくん。
16
途中長いことブランクを開けてしまいましたが、取り合えず読了。ここも、源氏さまの華やかなお遍歴が数々と! 亡き藤壺との事実が帝にバレるところから始まるも、源氏は懲りずにあちこちの女性を口説きまくって。親代わりとして引き取った内大臣の娘、玉鬘にも迫るのは流石に失笑。勿論これも物語ですし、当時の紫式部さんの読者を拡げる繋ぎとめたための、戦略的なストーリー展開とも言えますが。(笑) でも、紫上は全てお見通しのようで!!2022/01/10
LUNE MER
9
六条の源氏ハーレム御殿も完成し、玉鬘十帖にも突入する第四巻。ハーレム御殿は、まぁ、いい。あくまで当時はそういう風俗だったというだけで、現代人感覚と違うのはしょうがない。現代でこのシチュエーションならまず間違いなく連続殺人事件が起きるに決まってる。(多分探偵役は夕霧あたり。)その辺の割り切りが出来ても、玉鬘十帖の源氏は生理的に受け入れられないんだなぁ。気持ち悪い。個人的には髭黒グッジョブだよ(本巻ではまだ出てこないけど)。2020/02/11
おとん707
8
「薄雲」から「胡蝶」までを収録。源氏31歳から36歳に当たるが源氏物語の世界では現代の感覚とは違いずいぶん歳を取ったような書き方になっている。源氏と紫の上の会話など熟年夫婦の会話のようだ。源氏も随分慎重にはなってきたが源氏は源氏、夕顔の忘れ形見玉鬘を発見し自分の子と偽って六条の新居に住まわせるもののやっぱり欲情は抑えきれない。この玉鬘を巡る源氏と紫の上の会話など現代小説のような乗りで男と女の事々の普遍性に驚く。それにしても季節の催事の描写など絵巻を見るようで、夫々が楽器をとって合奏するさまなど誠に雅だ。2022/11/22