内容説明
帝の子として生まれた光源氏。美貌と才能を兼ね備えるが、その心には深い闇―父の後妻である藤壺の宮への許されぬ恋慕―を抱えていた。日本文学史上屈指の名作「源氏物語」。古典文学者として知識と作家としての筆力で描き切った、現代語訳の決定版がついに文庫化。
目次
桐壺
帚木
空蝉
夕顔
若紫
著者等紹介
林望[ハヤシノゾム]
1949年東京生。作家・国文学者。慶應義塾大学文学部卒、同大学院博士課程単位取得満期退学(国文学専攻)。ケンブリッジ大学客員教授、東京藝術大学助教授等を歴任。『イギリスはおいしい』(平凡社・文春文庫)で91年に日本エッセイスト・クラブ賞、『ケンブリッジ大学所蔵和漢古書総合目録』(P.コーニツキと共著、ケンブリッジ大学出版)で92年に国際交流奨励賞、『林望のイギリス観察辞典』(平凡社)で93年に講談社エッセイ賞、『謹訳 源氏物語』全十巻(祥伝社)で2013年に毎日出版文化賞特別賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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SOHSA
44
《購入本》口語訳版源氏物語を読むのは与謝野晶子訳版に続いて2作目だが、本書は格段に分かりやすい。源氏物語は主語がほとんど出てこず、文脈から主語を推量しなければならないが、本書はひとつひとつ丁寧に主語を書き示してくれている。何のストレスなしにまるで現代の小説を読んでいるかのような感覚で読み進めることができ、だからこそ物語に没頭できる。文語が当たり前の当時の人々はおそらく何の抵抗もなく原書を読めたのだろうが、さすがに私には千年前の古語はハードルが高い。いつかは原書をと思いながら、当面は林源氏を読んでいきたい。2019/07/10
たかしくん。
26
10年位前に寂聴さんの訳で中途挫折してしまったまま、今回はリンボウさんで再度チャレンジ。まだ1巻なので、偉そうなことは言えませんが。あまりにクセがなく、くどいくらいの丁寧さが第一印象だったのですが。いやいやその位に読みやすさが抜群で、素晴らしいの一言!ストーリー自体も前回の生半可さに比べて、詳細に読み込めている感じがします。まあ大方は、光源氏さまの色事噺ですが(笑)。しかも、手を出す度に、女性たちが不幸になっているような。夕顔は死ぬし、藤壷は孕ませるし。。紫の君は、これから?!2020/04/25
bluemint
19
訳が素晴らしく、つるつる読める。歌がものすごく多く出てくるが、掛詞の丁寧な説明も含め、それでいて自然な訳になっている。過剰な敬語をバッサリ切り捨て、主語を明確にして曖昧さをなくす。古語の覆いが除かれ物語自身の姿が露わになる。すると・・・。この巻での光は17歳ぐらいだが、今の目から見ると本当にどうしようもないクズに思える。始終別の女のことばかり考えていて、しかも異常なほどの執着心。字も書けないような幼女も強引に誘拐まがいの手口で手に入れる。昔の貴族の倫理観とは違うのだろうけれど。それにしても‥。2019/02/23
てらこ
18
初めての源氏物語、どの現代語訳にするか迷った結果、まずは原典から離れすぎないものにしようと思い本書を選択。たしかに過度にドラマチックすぎず、クセがない印象でした。なのに、小説としても面白いのがスゴイ!解説なしではわかりにくい部分などもほどよく補足されていて、注釈なしでも自然に読めました。源氏の女性関係にドン引きしつつ、次巻が楽しみです。2019/10/04
LUNE MER
17
バリアフリー源氏。源氏物語を読む上での障壁(文章の読み辛さ、和歌や当時の風俗に関する前提知識の欠如)がものの見事に解消されており、これで読み進められないということであれば源氏物語全帖読破は諦めたほうがいいだろう。しかし原文に対して文章量が約2倍となっている事実は、読み易さを得たと同時に、現時点での源氏物語研究の成果・訳者の解釈により内容が補正されていることを忘れてはならない。私は今回が3回目の源氏になるが、飽きることもなく幾度も読み返す読者がいるのも当然だと認識するに至っている。2020/01/23