内容説明
「死にたくない。生まれてくる子の顔を見たい…」不治の病に冒された青年医師が、最後まで生きる勇気と優しさを失わず、わが子と妻、両親たちに向けて綴った感動の遺稿集。
目次
第1部 ありがとうみなさん(ふたりの子供たちへ;あとがき;私の好きな言葉;私は泥棒;とんぼの目玉 ほか)
第2部 祈りをこめて(「父と母の記録」より(井村千重子)
祈りをこめて(井村倫子)
お兄ちゃんをみんな好きだった(津山有)
医師としての井村先生(徳田虎雄))
著者等紹介
井村和清[イムラカズキヨ]
1947年、富山県生まれ。日大医学部卒業後、沖縄県立中部病院を経て、岸和田徳洲会病院に内科医として勤務。1977年11月、右膝の悪性腫瘍の転移を防ぐため、右脚を切断。しかし、腫瘍は両肺に転移していた。1979年1月、惜しまれつつ逝去。死後まもなく次女誕生
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感想・レビュー
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やも
82
【再読】最初から最後までしっかり再読するのは、はじめて。「ズキン、ズキンとするのは痛いけれど、私にはそれが、建築現場の槌音のように感じるのです。私の壊れた体が健康な体へと生まれ変えさせて頂いている。」の文を読んで力をもらいたくて。この本は、若くして亡くなられた医師、井村先生の遺稿集です。死を目前にした飾り気のない言葉たち。若くして亡くなられたのは、どんなに悔しかったことか…。子供と夢を残し、親より先に逝く悲しさに負けず、井村先生は立派に生き抜きました。未来への祈りと優しさに包まれている本です。2022/09/01
たか
48
むかし、主人公の医師が名高達郎、その奥さんが竹下景子でテレビ放映されていたが、テレビ同様、この本も涙なしでは読めない。▼ 病に冒され余命宣告を受けた井村医師が、わが子・飛鳥と未だ見ぬ子、妻、両親に向けて綴った遺稿集。井村先生の医師としての責任感、人間としての苦悩、父親としての愛情が心を揺さぶられる。31歳の若さで妻子を置いて旅立つ気持ち。子ども達へ父として伝えたい思いと言葉。子を見送らねばならない親を思う気持ち…。癌が発覚してからも患者を励まし続けた井村先生には尊敬の気持ちしかない。B評価2022/11/26
くたくた
38
初読は40年以上前。この間癌治療は随分進歩しただろうけど、闘病の苦しみや、死んでいくことの悲しさ、口惜しさが減じることはなく、この手記を残した井村医師の言葉の1つひとつが、胸に迫る。2人の子供と親しい人に宛てて残された手記は、死後程なく出版され、NHKドキュメンタリー、映画、テレビドラマにもなっているのでご存じの方も多いだろう。しかしやはり、井村医師の言葉そのものに触れてほしいと思う。2024/12/28
金吾
27
○死を見つめ残していく人たちを思いながら、残りの人生を懸命に生きた著者に人間としての敬意を抱きます。無念さが伝わりながら冷静に考えを実行する点は自分には出来ないと思います。また知りながら知らない振りした奥様の哀しさにも胸に迫るものがありました。自堕落に生きがちな自分を戒める一冊です。2024/09/01
江口 浩平@教育委員会
26
【手記】読書のすすめの清水店長に、死生観をもつためにも読んだほうがいいと勧められて手にとった一冊。自分と年齢があまり変わらない著者が、妻とお腹の中の子ども、一歳になる幼い子供を残して癌で他界するという境遇に、感情を揺さぶられた。癌が発覚してからも医師としての仕事を続けながら患者を励まし、支え続けたこと。残された子どもに人としてのあり方を書き記し続けたこと。こうやって目の前の人を大切にし続けることが、人として残すことが出来る最上級のものなのだろうと感じた。折に触れて読み返したい。2018/03/15