内容説明
天正十年(一五八二)六月二日、明智光秀は本能寺に織田信長を討つ。しかしその天下は、わずか一一日で潰えた。信長も光秀も滅び、羽柴秀吉が天下人となるのは周知のとおりだ。では、この本能寺の変は、光秀と信長を取り巻く一族の女たち―正室、側室、娘、妹らの運命をどう変えたのか。また、彼女たちの知られざる側面と、一次史料から分かった新事実とは。信長の正室・濃姫は、ドラマで描かれるように本能寺で長刀を振るったのか。光秀の正室・煕子は、『明智軍記』の記述どおり坂本城で果てたのか。徹底した史料吟味と現地取材で戦国時代の女性たちの実像に迫り、女性の視線で乱世を見渡す画期的な一冊。
目次
序章 光秀と信長と七人の女
第1章 濃姫―織田家の運命を引き寄せた信長の正室
第2章 煕子―光秀の妻。夫の死を知って発揮した行動力とは
第3章 御妻木―“本能寺”の引き金となった光秀の妹
第4章 お鍋の方―信長の霊を弔う、もう一人の妻
第5章 お市の方―信長・光秀・秀吉に翻弄された生涯
第6章 細川ガラシャ―光秀の娘が背負った、父の十字架
第7章 春日局―光秀の姪孫が江戸城大奥に君臨するまで
著者等紹介
楠戸義昭[クスドヨシアキ]
歴史作家。1940年、和歌山県生まれ。立教大学社会学部を卒業後、毎日新聞社に入社。学芸部編集委員を経て執筆活動に入る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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金吾
25
本能寺はあまり関係ないかなと思いました。御妻木とお鍋の方が面白かったです。また処々に触れられる秀吉の悪辣さは事実でしょうが、繰り返し記述しているので著者は秀吉を嫌いなのだろうなと想像しました。2024/02/07
紫の煙
14
信長、光秀に関わりのある女性たちの、波乱の人生を知る。濃姫が光秀の従姉妹であり、光秀の妹が信長の側室であった。戦国時代は、女性の存在抜きでは語れないと思った。細川忠興とガラシャ夫妻の話も面白かった。期待以上の良い本。2021/04/27
coldsurgeon
9
濃姫、煕子、尾妻木、お鍋の方、お市の方、細川ガラシャ、春日局という戦国期を彩る7人の女性の実像に、新資料の解釈が入ったため、とても驚くことがある。この7人は、織田家か明智家のどちらかにゆかりがあり、歴史に翻弄されながらも、強く生き、歴史を作り上げたのかもしれない。とても面白かった。2020/12/24
大喜多さん
9
大河ドラマ麒麟が来るを見る足しに読みました。信長の正室の濃姫ですら、没年がわからないことに驚きました。滅ぼされた武将側の女性の記録は残りにくいとは思いますが、濃姫は早い時期に没した可能性もあるという。記録がないのが不思議です。 ほかの女性もよく知らなかったので興味深かったです。2020/11/03
Pon&Aki
8
新聞で紹介されていて、興味が湧きました。古文書や史跡を多角的に調査し、考察されています。飾り気が無い文章で、所々古文書の原文を引用し淡々と述べられています。が、落城するお城の窓から黒煙や炎が上がるのが目に浮かぶようなリアルさで、引き込まれました。戦には映画のような美しい散り様など無くて、負けた側の尊厳をとことん踏みにじる残虐さが恐ろしかったです。濃姫や細川ガラシャ等の有名人の深い事実の他、歴史の陰に隠れてこれまで知らなかった人物も取り上げられています。意外な事実も多く、そちらも是非ドラマにして欲しいです。2020/12/02