内容説明
ニュースで虐待死事件が報じられるたびに、人々は親の鬼畜ぶりに怒り、児童相談所や教育委員会、学校の手落ちを批判する。しかし私たちは、児童虐待に4種類あることすら知らない。なぜ「虐待」や「育児困難」は増えるのか。どうすれば子どもたちを救えるのか。市井の人々のドラマを描きつづける著者が、リアルな事案24例を多面的に掘り下げ、社会病理の構造を浮き彫りにする。
目次
第1章 虐待にいたる道のり
第2章 育て方がわからない
第3章 この子さえいなければ…
第4章 心と体の疵
第5章 ポイズン
第6章 星の下に
第7章 子供が歩く路
第8章 救いの手はどこに
著者等紹介
石井光太[イシイコウタ]
ノンフィクション作家、小説家。1977年東京都生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。国内外の貧困、災害、事件などをテーマに取材・執筆活動を行なう。作品はルポ、小説のほか、児童書、エッセイ、漫画原作など多岐にわたる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鱒子
87
どの事案も苦しい。本書で扱った24件の内容は多岐にわたるのですが、どれも複雑で根深い原因があります。もちろん身勝手な個人的事情と言い切ってしまえばそこまでですが、例えどんなに恵まれた育児環境だって、子育ては簡単じゃない。そして、個人的にはこのタイトルはいただけない。だって母親だけじゃないもの。2020/04/03
キムチ
56
「虐待」「育児困難」等の事例を羅列する事で解り易く問題の有りかを問う入門編。「これは鬼畜だ」と糾弾するのは容易。コミュニケーションは外国人親に有る要因の一つにすぎぬ・施設卒業の子へのフォーローがほぼ皆無・虐待の連鎖・1事例に絡む複数要因・妊娠依存症・レイプで生まれた子への憎悪・逃げた男が得する社会の仕組み等安易に解決できぬ事が山積。加えて知的障害者の育児・生まれつき衝動性、希死念慮がある事例の育児は責任糾弾すら不可能。かつて呪文のように言われた「子は実親が一番・愛情が有れば子は戻ってくる」というのは語れぬ2020/07/06
しゃが
53
『育てられない母親たち』のタイトルで24の事象を著している。彼女たちの生育歴やその後の周りの人々や生きかた、行政などの支援の説明。一つ一つの事例にはきっと同じものはないのだ。母親としての弱さや無知にも要因にはあるのだろうが、彼女たちが女性として母として自立するための社会の環境がないのが辛く、悲しい。石井さんの著作としては掘り下げ方がもう一歩だった。久しぶりの石井さん著作で『遺体』を思い出した。例年3月に震災関連の本を手にしていたが、今年は予定もしなかった。コロナばかりに気がいっていたことを申し訳なく猛省。2020/03/09
雪
46
なぜ育児困難や虐待が起きてしまうのか、主な要因ごとに事例が整理されていて非常に分かりやすく、語弊はあるかも知れないが、そういう状況だったらそうなるよな・・・と思う部分も多々あった。『育てられない母親たち』というタイトルだが、もちろん母親だけの問題ではない。無責任な父親も多すぎる。2020/03/24
読特
43
「身体的虐待」「性的虐待」「心理的虐待」「育児放棄」。4種類あるという虐待の事例が22。「複雑な家庭環境に育つ」という将にその通りストーリーが並ぶ。本書は取材報告であり、どうすべきかという提案はない。「気持ち良い読後感」では終われない。答えを見出すのは読者。個々の問題は様々で一律な回答はない。だが、どの問題に対処するにしても行政の体制強化は必須である。自治体の予算は限られているが、通貨発行権を持つ国にはその制約はない。突破すべきは緊縮に縛られた考え方であり、早くその間違いに気付かなければいけない。2020/08/02