内容説明
近衛内閣の内閣書記官長・富田健治が記した『敗戦日本の内側』。そこには、開戦へと至る過程での苦悩や生々しい発言が綴られていた―
目次
解説(川田稔)(「時局処理要綱」―近衛内閣による対英戦争計画;新体制運動―陸軍をも飲み込もうとした近衛;日独伊三国同盟―それは対米戦争回避のためだった;日米交渉―アメリカの事情を見抜けなかった日本;南部仏印進駐―南進よりも北進を恐れたアメリカ ほか)
敗戦日本の内側―近衛公の思い出(富田健治)(盛り上がる政治新体制;暗い湯船の中で燃え立つ明るい政治への希望;近衛公に第二次組閣の大命;支那事変の早期解決―第二次近衛内閣の使命;不言実行の政策を―口先の宣伝はいっさい止めて ほか)
著者等紹介
川田稔[カワダミノル]
1947年、高知県生まれ。1978年、名古屋大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。法学博士。専門は政治外交史、政治思想史。名古屋大学大学院教授などを経て、名古屋大学名誉教授、日本福祉大学名誉教授。著書に『昭和陸軍の軌跡』(山本七平賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
樋口佳之
41
松岡、近衛両氏は日米開戦について最重要人物だったのだな。そして両氏とも敗戦後間もない時期に亡くなってしまっている。それによってかえりみられる事少なくなってはいないだろうか。/「悔いもなく 怨みもなくて 行く黄泉」(松岡洋右 辞世の句)/ちょっとさすがにこれはない。2021/09/06
CTC
14
19年11月の祥伝社新書新刊。この本は第二次及び三次の近衛文麿内閣で書記官長を務めた富田健治の回想録(62年刊)に、川田稔氏が解説をつけて、主に日米開戦への流れと戦中の近衛の様子を追うもの。川田さんの100頁くらいのテキストを読んでのちに本編に入る形式のため、要点をスムーズに捉えられる。本編は元々の回想録のうち前述の期間だけを収録しており、原著にある“近衛自殺の真相”のような時期を収録していない。しかし川田さんの言う通り「きわめて平易でわかりやす」く、特に日米交渉時の機微や空気感が迫るように伝わってくる。2020/02/14
筑紫の國造
8
著者は、内務官僚で第二次及び第三次近衛内閣の書記官長を務めた人物で、その回顧録の主要部分を復刊したもの。川田稔氏による詳細な解説が前文としてあり、富田や近衛の関係性、本書の信頼度などについて知ることができる。内容は書記官長として仕えた人物ならではの貴重な情報も含まれ、近衛内閣時代を知る良いテキストだと言える。ただ、こうした本の常として近衛の政敵や対立者については実際以上に厳しく、そのあたりは割り引いて読む必要がある。原著は絶版で非常に入手しづらく、その点で研究者の解説付きの復刊は貴重だと言える。2021/07/28
hdo obata
8
倉山満、林千勝に続いて川田稔の近衛文麿像・・・。どれが真実の近衛なのか?右翼にも左翼にもいい顔を見せる鵺のような公家か?軍部がいやがるシナ事変を仕掛けて、敗戦革命を目指した隠れ共産主義者か?「日米戦争」を必死になって止めようとした川田が描く「忠実なる臣民」か?この本を読み通すのに2ヶ月以上かっかってしまったが、熟々思うに、鵺、隠れ共産主義者、忠実なる「臣民」此は3つとも真実であろう。どの面にスポットライトが当たるかによって異なる人物像になってしまうが、どれも真実の近衛文麿である。いやはや食えぬ人物である。2020/06/06
フンフン
3
富田健治の『敗戦日本の内側』は日米開戦にいたる歴史の研究には欠かせない史料なのだが、現在古本屋サイトで検索しても見つからない稀覯本となっている。その主要部分に川田による解説を加えたのが本書である。松岡や近衛がドイツやソ連をあてにしてアメリカを抑え込めると信じたバカさ加減は実に度し難い。万一日独ソの提携で英が屈服するような事態となれば、日本は独ソによる過酷な属国扱いを受けたことは間違いない。いったい第1次大戦でロシアに革命が起きた際ドイツがシベリアまで進撃することを恐れたのは何だったのか? 2020/03/24