内容説明
かつて、東京大学に第二工学部(略称・二工)が存在した。戦時中の一九四二年四月一日に開学し、一九五一年三月三十一日に閉学となった、わずか9年間の“幻の学部”である。そして、閉学から30年後の一九八〇年代、二工出身者が次々に著名企業のトップや重役に名を連ねた。日立製作所、三井造船、三菱電機、ソニー、富士通、日産自動車、マツダ、鹿島建設、三菱商事…。多くの人材を輩出し、戦時中には最新兵器の開発に携わり、戦後は「戦犯学部」と蔑称された。その知られざる実態とともに、戦後日本経済の歩みを追う。
目次
第1章 第二工学部設立の背景
第2章 第二工学部の開学
第3章 講義内容と学生生活
第4章 戦時下の研究
第5章 戦後の変化と閉学
第6章 卒業生と戦後の日本経済
著者等紹介
中野明[ナカノアキラ]
ノンフィクション作家、同志社大学非常勤講師。1962年、滋賀県生まれ。1985年、立命館大学文学部哲学科卒業。情報通信・経済経営・歴史民俗の3分野で執筆を続ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちくわん
9
2015年12月の本。太平洋戦争跨ぎで、兵器開発のため最高学府東京大学に新しい工学部を増やした。敗戦後、各所から非難されたので「戦犯学部」の汚名を着せて廃部した。戦後のインフレに対するリスクヘッジの方法、渡辺慧助に興味あり。2019/05/12
imagine
4
これは掘り出し物。幻の学部に焦点を当てる切り口が成功している。戦犯学部と揶揄されながらも、日本の高度経済成長に大きく貢献する人材を輩出したという光と影。当時の学生生活や時代背景を丹念に調べ上げ、現在の重工業界の成り立ちを淡々と提示する抑え目のトーンがよい。防衛装備の輸出や研究助成金の在り方、原子力の是非などが問われる現在への問題提起も、行間から感じ取ることができた。2017/12/28
Kiyoshi Utsugi
2
千葉市において戦時中の1942年4月1日に開学し、1951年3月31日に閉学となった東京大学第二工学部の話です。 まさに、戦争における戦力増強の要求を受けて作られた大学ですが、今まで詳細は知りませんでした。 この第二工学部の出身者だけではないと思いますが、当時学生だった人たちがまさに「ジャパン・アズ・ナンバーワン」世代ということを改めて認識しました。2015/12/25
本命@ふまにたす
1
戦前から戦後の一時期に存在した東大の「第二工学部」について概観。時代の流れなども説明しつつ、わかりやすく書かれている。第二工学部が育てた人材に焦点を当てているのが特徴か。2021/11/29
ドリアン・グレイ
1
戦時中の東京大での生活の様子がわかり面白かった。第二工学部出身で企業のトップになった人は多いようだがおそらく第一工学部出身で同じような人は多いだろうし東大だからという理由なのではないか。今も昔も千葉のキャンパスには行きたくなかったものなのだなと感じた2016/12/07