内容説明
就職活動を略して「就活」。いまや多くの学生にとって人生最大の難所であるが、この漢字二文字の表現が一般的になったのは、そう古い話ではない。この世界的にも稀な社会制度はどのようにして生まれ、いかに変質し、維持されてきたのか。豊富な事例や発言をもとにその実状を丹念に追ってみると、日本の現代史の一面が見えてきた。
目次
序章 「就活」の表層と深層
1章 昭和恐慌と「大学は出たけれど」
2章 戦後復興と太陽族たちの就職
3章 高度経済成長期の新卒者たち
4章 オイルショックからバブル前夜まで
5章 泡沫とその崩壊
6章 ポストバブルの自分探し
終章 「就活」の未来へ
著者等紹介
難波功士[ナンバコウジ]
1961年、大阪市生まれ。京都大学文学部卒。東京大学大学院社会学研究科修士課程修了。博報堂勤務を経て、関西学院大学社会学部に転職。2006年より同教授。近現代社会史・メディア文化論で評価が高い(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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こだま
5
黒いリクルートスーツを来て就職活動するのは比較的最近のことだが、それ以外の制度は100年前からあったということに驚いた。映画や小説からの引用が多いのが読みづらいし、映画などはある程度脚色している部分もあるので、資料として使うときには注意が必要だと思う。2017/06/04
田中峰和
5
世界でも珍しい習慣である日本の「就活」についての大正から現代までの通史。就活は近代日本史の一部、十分研究に値する分野なのだ。最初に就職をテーマにした映画は小津安二郎監督の「大学は出たけれど」で当時の流行語にもなった作品。著者はよほどの映画好きなのか時代ごとの就職状況を当時の映画から論じる。高度成長期植木等の無責任男や加山雄三の若大将など能天気な就職が描かれている。70年代には「俺たちの旅」で描かれ、学卒後就職しない生き方をドラマ化。挫折し続ける就活がリアルすぎて放送打ち切りになったCMなど話題は尽きない。2015/03/17
ぷほは
3
50に及ぶ図表と鈎括弧のない頁はないと言える程の引用・参照数。一級の研究者の統計から雑誌のアンケート、政府の会談から雑談、余談の雨あられ。社会史という言葉自体1970年代からの中世再評価を軸とする「データの爆発」を期に拡がった用語だが、それは現代に近づくほどに語りの希少性を減少させ、誰もが好き勝手に話をして、本筋は横道に逸れ続ける。まさにdis-course(言説)と呼ぶに相応しい散逸具合だが、その中でも実は驚く程同じ話の型が繰り返されていたりする。そしてそれは、膨大な語りの密度でのみ遂行的に示され得る。2017/01/22
Pinkberry
3
ざっと読み。 とにかくあの没個性な黒スーツはなくして昔にもどしてほしい。 バブリーな世代に生まれてピンクスーツで就活してみたかったなー!2015/04/03
sober
3
やや脈絡に欠ける箇所があるものの、就活事情の歴史的変遷が掴めます。雑誌の引用が多いが、文体が変わりつつも内容が十年一日なのには笑ってしまった。学歴差別やコネは今も昔も存在しており、多分これからもなくならない。著者は現行の就活制度に懐疑的な意見も持っている一方で、概ね肯定的な立場であるようだ。若者に優しい新卒一括採用システムを維持するには、今日の就活制度を抜本的に改めることは困難であるというジレンマは、大変重要な視点である。海外では経験者が優先して採用されてしまうので、必ずしも若者が調法されるわけではない。2014/12/23