内容説明
漢文の授業は、『論語』や『三国志』など、古典の名文や名句の賛美に終始するものではない。漢文を学ぶことの本質とは、その読み方から考えていくことにあると教えてくれる。ゆえに漢文は、考える力を養うのに最適のテキストなのだ。こんな授業を受けたかったものだ。慶應志木高校の3年生が受けた漢文の授業内容。
目次
第1講 漢字の成り立ちを見てみよう
第2講 四書五経と朱子学について簡単に学ぼう
第3講 『論語』は本当に完全無欠なのか、疑ってみよう
第4講 素朴な『詩経』の、すごい解釈を見てみよう
第5講 『老子』の世界観を感じてみよう
第6講 正史『三国志』を読んでみよう
第7講 歴史と物語の関係について考えよう
第8講 学問をしよう
著者等紹介
橋本陽介[ハシモトヨウスケ]
1982年、埼玉県生まれ。慶應義塾志木高等学校卒、慶應義塾大学大学院文学研究科中国文学専攻博士課程単位取得。博士(文学)。現在、慶應義塾大学非常勤講師(中国語)。慶應義塾志木高等学校非常勤講師(国語)。専門は、中国語を中心とした文体論、比較詩学。ほぼ独学で、7カ国語を習得した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夜間飛行
74
高校生の頃から持っている漢和辞典や参考書の著者・藤堂明保さんのことが書いてあり、興味深かった。久しぶりに読む漢文は、長いのになるとお手あげだが、短いのは訓読できたり意味が取れたりするとうれしい。四書の一つ「大学」の本文などエラく難しいけれど、それを朱子という学者がどう解釈したかを考えていく作業は面白く、昔の人の考えというより目の前にいる人と対話しているような感じだった。取っつきづらいと思っていた漢文も、こうやって読み直してみれば良さがわかる。メシの種でもない勉強を好きなだけやれる時期って貴重だったんだな。2018/01/20
シタン
31
衝撃の名著。これぞ学問だなあ。 漢文(『大学』『論語』『詩経』『老子』『三国志』)を読んでいくのだが、そこに解釈の余地が大いにあること、視点によって全く別の意味となることが強調される。論語の孔子のグチや迷言とみなす解釈、詩経のエロチックな解釈など、面白い。歴史の物語性、多くの歴史好きは単に文学好きである!などの話は、歴史マニアを自称する者たちにもおすすめ。個人的お気に入りは『老子』だなあやはり。ジャック・デリダの脱構築やエドワード・サイードのオリエンタリズムを絡めながら、知を考えていくところは特に熱い!2019/02/16
志波昌明
10
慶應志木高校の高三の漢文の一年間の授業記録。漢字の成り立ちから、論語、老子、三國志まで、取り上げる教材も多岐に渡り、映画「赤いコーリャン」を見たり、ロラン・バルトやフーコーといった西洋の哲学者まで出てくる。博覧強記で、漢文が読みたくなる面白い授業だった。最終章の「引用が繰り返されることによって真実になる」に共感。何も考えずに引用を繰り返すマスコミやネットはますます増えてる。自分で考えることがより大事になってるなあ。2016/04/18
きつね
10
2013年度に著者が慶應義塾志木高等学校で実際に行った三年生の授業がもとになった本ということで、いわゆる受験指導としての「漢文講読」とは全く異なる魅力的な授業が平易な言葉で収められている。 漢字の成り立ちから朱子学、論語、詩経、老子ときて、三国志などの物語と歴史の関係に踏み込み、 「ある見方を絶対的なものとして信じこんでしまうのは、たいへん危険なことであって、ときに政権に利用されると大きな悲劇を生むことにもなる。どのような見方からの歴史なのかを、しっかり考える必要がある。教科書の記述をそのまま信じこんで丸2016/03/25
たか
10
漢文…。そもそも古文に比べて存在が地味だし苦手だったという人が大多数ではないでしょうか。この本では教師と生徒の対話形式で文法や語彙だけにとどまらず背景知識なども解説してます。2014/09/11