内容説明
三井、三菱、住友に代表される「財閥」。古くは江戸時代の豪商に始まるものもあり、幕末から明治にかけて強大な地位を固めた。太平洋戦争後、GHQによる財閥解体でその形を変えたものの、それらの名は今も巨大な企業グループとして残る。財閥のルーツはどこに求められるのか?財閥を作れた企業家とそうでない者の差は?戦後の企業グループと財閥に、違いはあるのか?財閥を通して見えてくる、日本の近現代史の秘密に迫る!
目次
第1章 財閥のあけぼの―「三井・住友」のルーツを探る
第2章 財閥と成り上がり者―海坊主・岩崎弥太郎の三菱
第3章 次々と勃興する財閥―あまたいた企業家精神の持ち主
第4章 財閥創始者の共通点―天保世代は財閥への条件か
第5章 財閥完成への道のり―組織の巨大化・多角化
第6章 割拠する財閥の特色―大陸進出と新興財閥の勃興
第7章 大戦景気と財閥の戦略―大好況と大恐慌の中で
第8章 財閥からコンツェルンへ―巨大化するグループとその弊害
最終章 財閥から企業集団へ―「解体」を乗り越えて生き続けたもの
著者等紹介
中野明[ナカノアキラ]
ノンフィクション作家。1962年、滋賀県生まれ。同志社大学非常勤講師。歴史・経済・情報の三分野で執筆する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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だてこ
9
財閥解体とは、「特定の家族・同族が経営を排他的に支配する」構造の解体であって、企業自体がなくなったわけではない。かつて財閥に所属していた企業は、今は企業集団となって存続している。財閥解体によって権力が財閥一族から専門経営者に移ったことから、本書ではこの一連を財閥一族からの権力奪取に100年以上を必要とした「使用人」による緩慢なる経営改革の歴史でもあったとしている。この視点は新鮮だった。2021/11/20
森章生
1
学生時代に概要を習った財閥、当時はテストに出る人物の名前を暗記するだけだった、、、 本書により、歴史的背景や各企業の創始者・経営者の人物像等を学び、自身も少しばかり社会のことをわかるようになった今、非常に有意義な社会の講義を体験できた2023/05/30
rbyawa
0
f007、財閥関係の本はそこそこ読んでいるのでとりたてて目新しい内容があったわけではなかったんですが、幕末からの政商や為替商に関してや(三井や消えた豪商がこれ系)、払下げの鉱山や各産業(住友が代表格ですが一気に払い下げていた時期があってだいたい引き受け先が決まってたというのは目新しかったと思う)、それと政府の海運に絡んだ事情(三菱の台頭から日本郵船誕生まで)、などと時代順に扱ってたのでまあわかりやすかったかな、戦争絡みの資本に関してはもうちょっと踏み込んでたら面白かった気もしますが扱ってるだけでも珍しい。2015/01/22
くす
0
図書館にて。冒頭に作者が述べているように学術書のような厳格なものではなく、あくまで物語として概観を目指した本。ただ、企業の成立から発展、大戦を経ての解体までのダイナミックな動きは感じられる。創業期の政府(特に井上馨)の癒着がバックボーンにあることを考えると、商社のような大企業は今後生まれにくいのだろう。興味深い世界恐慌時の商社への反感で社会主義活動が今より血気盛んであったことが伺える。2022/05/27
雲黒丸
0
幕府の頃からとか、歴史を感じる。現存する企業の過去や背景を知ることができる。WW1の頃からは国よりも民が主役であったとのこと。そう考えると、日本が国際社会の中で国として存在した時代は短いのかもしれない。勉強が必要。2021/02/16