内容説明
辻政信ほど、常人の理解を超えた人間も珍しい。一介の参謀にすぎない彼が、各所で上司を無視して無謀な作戦を主導し、敗戦に導いたばかりか、陰謀、虐殺、偽命令などの事件を次々と引き起こす。だが、なぜか責任を問われることなく、また次の作戦に姿を現わす。周囲からは蛇蝎のごとく嫌われながら、戦後は大ベストセラーを連発し、圧倒的人気をもとに国会議員にも当選。最期は議員の身分でラオスに潜入し、そのまま消息を絶った。その彼の、さらに知られざる一面が、二〇〇五年のCIA文書の公開で明らかになる。そこに記された蒋介石との関係は、まさに驚愕に値するものだった。
目次
序章 辻政信とは何者か(辻政信という「魔女」;ノモンハン事件において、辻は何をしたか ほか)
第1章 「魔の参謀」の誕生と完成(女遊び嫌いと亭主関白;芸者に酒を吹きかけた事件の顛末 ほか)
第2章 「魔の参謀」と「東洋の魔神」の接点(日本軍が大勝利を収めた大陸打通作戦;「連合国のイタリア」だった中国 ほか)
第3章 新資料が明かす「終焉」の謎(CIA文書に残る「吉田茂暗殺計画」;CIAに情報をもたらした人物とその背景 ほか)
著者等紹介
渡辺望[ワタナベノゾム]
1972年群馬県生まれ。早稲田大学大学院法学研究科(刑事法研究室)修了。西尾幹二氏に師事し、雑誌やインターネットで評論活動を展開する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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CTC
9
著者は西尾幹二の弟子で文筆・評論家だと。半藤一利さんに“絶対悪”とまで云わしめた(過去の行動に、ではなく、国会議員として眼の前に居直っている事を含めてなのだろう)辻政信は旧陸海軍人の中でも異端だ。特に、東亜の安定に立脚した構想を持つ石原莞爾に心酔した筈なのに、何故苛烈で非道な戦を兵に強いたのか。本書では、辻は石原の構想力や実行力といった能力に圧倒されたのであって、思想や信条はどうでもよく、却って結果を出しさえすれば、とタガを外してしまった、と。そこは一応納得だが、次章以降は目も当てられない講談ですなあ。2015/06/04
清 義明
3
吉田茂暗殺計画を取り上げているが、著者自ら記しているとおりCIAの情報評価はF6(A-1からF-6までの36段階で最下位、つまりガセ認定)。 こんな話を真面目にとりあげるのもどうかと思うが、辻政信の悪行のひとつシンガポール華僑虐殺事件までもが、蒋介石としめしあわせた日本を貶めるための陰謀だったというような説は、ほぼ空想小説の類。 蒋介石の日本での善人評価は一面的という踏み込みまではよかったと思うが、いろいろ飛躍しすぎである。 本書に引用多い『参謀辻政信伝奇』等を参照したほうがよろしいかと2021/03/24
fseigojp
3
沖縄戦はあったのに台湾戦はなかった 蒋介石に気をつかったためか2015/02/22
ERI
3
著者の偏向的な立場が前面に出ていて、その主張を素直に納得することが出来ない。辻が魔の参謀であることも、蒋介石の密使であったことも事実なんだろうけど。「形而上学的プライド」って…何が言いたいのかさっぱり分からない。蒋介石の天才的工作などは説得力に欠ける。2014/09/01
みじんこ
3
辻政信の名前は以前聞いたことがあったが、どんな人物なのかは知らなかった。様々なエピソードがあり、一人の人間として辻を研究することは面白いと思うが、やったことは残虐で悪辣である。シンガポール華僑虐殺事件を主導したり、捕虜大量虐殺未遂などをしたこの男こそ戦犯として裁かれるべきだった。そして辻が自分を売った男である蒋介石の正体。黄河決壊事件を初めて知った。毛沢東以前の中国も同じくジェノサイドの国だと言える。著者の唱える辻政信の姿が必ずしも真実であったかは、辻本人のみぞ知る。2014/06/21
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