内容説明
夏目漱石と村上春樹は、ともに「国民作家」というべき、日本を代表する作家である。従来、二人の作品は「個人」の側面から語られることが多かった。しかし、彼らが国民作家である最も大きな理由は、ともに自身が生きている時代社会のあり方とその行方を、作品に盛り込みつづけたことにある。そもそも、漱石と春樹には、時代に対する意識とその表現方法に共通項が多く見られる。本書では、その観点から作品を読むことで、彼らが日本をどのように見ていたのか、明治から現代にかけて、この国で形を変えて繰り返されるものと、新たに生まれてきたものを見ていく。
目次
第1部 二人の出発点―それぞれの時代への眼差し(「真」を捉えようとする表現(漱石)―『吾輩は猫である』『坊つちやん』
混在する時間 六〇年代と七〇年代(春樹)―『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』)
第2部 大きな物語の後で―支配される人びとの姿を描く(「個人主義」と韓国併合への反感(漱石)―『それから』『門』
情報に支配される現代(春樹)―『羊をめぐる冒険』)
第3部 「空っぽ」の世界―二人にとっての“ポストモダン”とは(「淋しさ」に至る“勝利”(漱石)―『こゝろ』
「空っぽ」の人物たち(春樹)―『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『海辺のカフカ』)
第4部 未来と過去を行き来する物語―二人の込めた“日本”への願いとは(“未来”からの眼差し(漱石)―『こゝろ』『道草』『明暗』
「心」のつながりと「物語」への期待(春樹)―『アフターダーク』『1Q84』)
著者等紹介
柴田勝二[シバタショウジ]
東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。博士(文学)。1956年生まれ。1986年、大阪大学文学研究科芸術学専攻単位取得退学。山口大学助教授、相愛大学助教授などを経て現職。専門分野は日本近代文学。明治・大正期から現代にいたる近代文学を幅広く研究・評論している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ころこ
佐島楓
ロッキーのパパ
NAKY
酩酊石打刑
は形状がマウスに似ていて初期作品の重要人物鼠を想起させるなどなど、ほとんど笑ってしまうような言及ではあるのだが、詩とか映画とか音楽とか自由に妄想を楽しむのも読書の愉悦だろう。2016/09/06
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