内容説明
滝田ゆうは、日本人が失いかけている懐かしい町並み、人と人との絆を描きました。町や路地を独自の筆致で描き、日本の漫画界に並ぶ者のない孤高の作家として、いまなお多くの人々の心をとらえて離しません。日々、懐かしい昭和の人と風景が消えつつある今、あらためて滝田ゆうの描く「昭和浪漫」の世界が心に沁みることでしょう。歴史に残る傑作『寺島町奇譚』からは「ぬけられます」などよりすぐりの四編を。また漫画家の日常を題材に人生の機微を描く『泥鰌庵閑話』、歌謡曲の名曲をもとに泣けるショートストーリーが展開する『滝田ゆう歌謡劇場』から名品中の名品を収録しました。
目次
「寺島町奇譚」より(げんまいパンのホヤホヤ;花あらしの頃;ぬけられます;カンカン簾)
「泥鰌庵閑話」より(きつねあざみ;いま来たこの道…;新宿流し唄;スズメ;ビニールおじさん;夕空晴れて;カストリゲンさん)
「滝田ゆう歌謡劇場」より(男の純情;別れ船;リンゴの歌;好きだった;浪曲子守唄)
著者等紹介
滝田ゆう[タキタユウ]
昭和6年、東京都旧入谷区に生まれる。生母はその翌日逝去。旧向島区寺島第二小学校から電機第一工業学校に進み、同31年『なみだの花言葉』で貸本漫画デビュー。田河水泡の弟子となり、数々のコメディー漫画を発表。同42年から雑誌「ガロ」などを舞台に独特のタッチの作品で、昭和の町と人を描きつづけた。平成2年に亡くなった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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剛腕伝説
11
昭和20年代の東京・墨東界隈を描いた郷愁溢れる滝田ゆうの漫画。この人は酒の飲みすぎで50そこそこで亡くなったらしいが、それにしても味わい深い作画のタッチに心惹かれる。 昭和も終わる頃にこの辺りを歩いたが、玉ノ井の裏路地で『ぬけられます』の看板を目にした事が思い出される。入りくんだ裏路地が重なるようになっております、猥褻で何か艶っぽい風景の町だった。数十年前は色街だっこの辺りも随分と変わってしまった。2024/03/08
犬養三千代
4
解説で夏目房之助かいみじくも書いている。郷愁も記憶も現在の選択だと。滝田ゆうの戦前、戦後の物語もそうなのだ。線の匠だ。もう一度読もう!そして味わおうと思う。2021/03/24
辺野錠
3
天然素材NHKで作者の映像を見て知らない漫画家だったので気になって読む。こんな漫画があったのか!とひたすら驚いた。過去の玉ノ井を温かみと精緻さを併せ持ったタッチで描いているのが良かった。吹き出しの中にセリフじゃなくて絵を描いて表現するのが独特。他の作品も読んでみたくなった。2025/03/12
麦焼酎
3
昭和6年生まれで、昭和31年に貸本漫画デビュー。その後漫画雑誌ガロで活躍した滝田ゆう。平成2年にお亡くなりになっているので、まさに昭和をまるっと生きた人。スクリーントーンを一切使わず、ペンとベタだけで描かれた絵が旧東京市向島区寺島町(玉の井)の風俗と絶妙に融合している。滝田氏の少年時代をモチーフとした半自伝的作品だからリアルなんだろうなあ。この本ではじめて知った漫画家さんなので、他の作品もぜひ読みたい。そして、こういう絵を描きたい。いまの時代じゃあ売れないかぁ。2022/06/06
KAZOO
3
昭和の二十年代の下町がこのコミックを読むことによってよみがえってきます。「寺島町奇譚」「泥鰌庵閑話」「滝田ゆう歌謡劇場」からえりすぐりの話をいくつか選んでいます。今の人には話の中身というのはわからないかもしれません。滝田さんの絵は本当に下町のおばさんやおねえさんなどがぴったりの絵になっています。今後このような感じの場所などは本当に珍しくこの本の中でしか見れなくなってしまいそうです。2013/09/30
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- 和書
- 重光・東郷とその時代