内容説明
「地霊」は崇めれば守り神に…しかし傷を負わせると報復される。多くの災厄や災害、原発事故など、悲惨な事例がそれを物語っている。建築防災の専門家が解く地霊の本。
目次
1 盛り場にひそむ地霊の闇(横井座の悲劇;横井座とはどんな劇場だったのか;千日前は仕置場だった ほか)
2 ビル街に残る将門の記憶(大蔵省の首塚事件;祟り神としての将門;日比谷は入江だった ほか)
3 鉄道に踏みにじられた地霊(骨ヶ原での腑分け;小塚原とはどんな所だったのか;吉田松陰の処刑 ほか)
4 台地にひそむ地霊の黒い陰(淀川大洪水で河内平野は海に;河内湾から河内湖へ;淀川の歴史は堤防の歴史 ほか)
5 震災で浮かび上がった地霊(母への最後の手紙;新婚の妻へ;幼い子供へ ほか)
6 地霊の声は防災の原点(沖の百万坪;地名には地霊が隠れている;失われた地名 ほか)
著者等紹介
岡田光正[オカダコウセイ]
1929年高知県に生まれる。1952年京都大学工学部建築学科卒業。清水建設(株)・京都工芸繊維大学助教授等を経て、1962年大阪大学工学部助教授。1967年大阪大学工学部教授。1992年同定年退官、大阪大学名誉教授。1992~1997年大阪工業大学教授。工学博士。1965年日本建築学会賞、1986年空気調和衛生工学会賞、2011年日本建築学会大賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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内島菫
20
建築、安全工学、防災の観点からの地霊論。三河島事故の話は、その頃東京に住んでいた両親から聞いていた。常磐線でお寺やお墓の真ん中を高架線で侵入していくだけでも乗っていてあまりいい気がしないのに、事故を思い出すとまた引き込まれるのではないかとひやっとしてしまう。歴史の潮目、特に明治期は地霊に関することだけに限らず、さまざまな愚行が横行した時代だったように思う(例えば、女性が相撲の土俵に上がってはいけないことになったのも、古代に遡るのではなく、明治期に歴史や伝統が捻じ曲げられたことが主たる要因だったりする)。2018/08/13
masa
19
建築防災の専門家である著者が「地霊」と災害、災厄との関係を綴ったもの。地霊とは土地の歴史・蓄積された記憶であり、刑場や大量死跡地には恨みや呪いが地霊として残るという。千日デパート火災、将門の首塚、三河島列車事故などと地霊の因果関係には多少こじつけを感じるが、福島第一原発が特攻隊跡地であったことは初耳だった。百人一首に詠まれた宮城県多賀城市に現存する「末の松山」の手前で津波が止まり、正に「波越さじ」であったことは、先人達が私達に残したメッセージとして改めて感じ入った。15872015/05/31
TAKAMI
2
ゲニウス・ロキという概念は読み物としては面白いんだけど、それ以上どう考えたらいいんだろうなって思っていたが、これは建築防災の専門家が書いた本か。確かに自然災害そのものが人を死なせたりすることは少なく、建物の倒壊や川の氾濫で人が亡くなるから、その場所に何を建てるのかということについて真摯に歴史を知ることは必要だとは思う。2015/06/06
田中峰和
1
オカルト研究家の山口敏太郎と比較するのも失礼だろうが、内容は同程度。地霊は崇めれば守り神になり、傷を負わせると報復される。多くの災害、原発事故など、悲惨な事例を紹介しながら、備えの重要性を説く。福島第一原発の地はかつて、特攻隊基地であったらしい。敵機に体当たりして自爆を義務付けられ訓練を受けていた基地である。この地が原発事故に遭遇したのは英霊の祟りではなく、全面的に東電による人災であることが明白と指摘。35mの土地をわざわざ25mも削ったせいで原発事故が起こったという説。本書の災害は全て人災で納得した。2015/05/16