内容説明
本書に登場するのは1950年代、60年代に日本に建てられた建築であり、近代(主義)建築とか、モダニズムの建築と呼ばれるものである。しかし「近代主義建築」という語は建築史以外では一般的ではなく、その一方でかつてこの種の建築を意味する語であった「近代建築」の指示対象は、今では歴史主義(過去の建築様式を適用する設計方法)や和風の建築などを含めるまでに拡大され、“近代の建築”、つまり事実上“近代につくられた建築すべて”になっているので、本書のタイトルでは「モダンアーキテクチャー」とした。この本では24の建物がとり上げられている。その中には、一般的には“作品”とは見なされないものも含まれるが、これはモダンアーキテクチャーの幅の拡がりを示したいという編集の意図によるものである。それらの建物を冷静に見られるだけの時間的距離を持てる建築家が、現在の視点から、個別の建物や建築家を紹介し、批評しているわけである。それぞれのアプローチの仕方はさまざまだが、そのこと自体がモダンアーキテクチャーを解読するという作業の多様性や可能性を示唆する仕掛けにもなっている。
目次
一連の「最小限住宅」―現代建築の源流
リーダーズダイジェスト東京支社―戦後日本近代建築の出発点
神奈川県立鎌倉近代美術館―近代建築精神の遺産
法政大学―学校建築に託したこと
東京厚生年金病院ほか―モダンな形というメディア
神奈川県立図書館・音楽堂―「明るさ」と「透明感」をめぐって
国際文化会館―モダニストの協同設計
秩父セメント第2工場―「明るくて美しい工場」の追求〔ほか〕