内容説明
東へ西へと跳梁跋扈。前代未聞の公共施設。日常空間に突如として現れたデザインは、「かわいい」形態を持ちながらもどこか「奇っ怪な」雰囲気を漂わせている。河童や果物、特産品、動物、メルヘンなど、公共施設に取り付けられた図像たちは、一体何を語ろうとしているのか…。
目次
１ ディズニーランダゼイションの登場
２ 偽装の図像図鑑
３ 仮構される公共空間
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
つまみ食い
5
「国道沿いのパチンコ屋やホテルなどと全く同質の驚くべきデザインの公共施設が全国規模で存在すること」（248）への驚きを出発に、そうしたデザインが全国的に生まれた背景を公共性の衰退や建築界の変容と結びつけて論じている。1996年初版ということで、当時は時事的なトピックを扱い各地の建築物の写真も同時代のものとして豊富に載っているが、今は現存しない建物も多く、歴史的な記録にもなっている。2024/07/13
yamikin
4
バブルだけで「異様な建築」は語れない。なぜ、その予算でこのデザインにしたのか、という思想性が必ず付いてくるからだ。そこにはカワイイ物語性を無理やりひねり出そうとして右往左往する自治体の姿があった。機能主義、合理主義的近代建築から装飾のポストモダン建築へ。差延化。田舎の公共、そして観光の困難がよーくわかる。こいつは読み安くて面白い！！2010/06/03
ささ
3
▪️発行が1996年ということもあって、掲載されている建物の中でも姿を消しているものは多い。ご当地ものな電話ボックスたちが面白い。まさか電話ボックス自体が街から姿を消すなんて当時は誰も予想できなかったはず。町おこしのとっかかりとして、今で言うところの映えを押し出し、まずは興味を持ってもらうところから、継続的に集客するのはなかなか難しいな、と感じた。小矢部のメルヘン公共建築も当時として、その発想は面白いのだけれど、維持費もかかるだろうし、いまはどうなっているのか。また調べてみようと思う。2024/06/30
どぅまち
1
この手のデザインはバブル期の仇花のようで、実は未だに乗り越えられていない問題ともいえる。物語を失った公共空間は、人とモノを結びつけるためにひとつの「世界」という虚構を提示する。しかし、その「世界」は人々の嗜好から逸脱する危険性を併せ持つため、虚構が虚構を生み続け収拾がつかなくなる。 そういった喪失の時代だからこそ、建築の自律性が求められると説くが、都市開発にせよデザインにせよ未だにその部分で躓き続けている光景はよく見る。2016/11/01
おたく
0
「『ディズニーランダゼイション』は、消費を喚起させる『看板』をストレートに建築化させたのではなく、消費を導くための『かわいい』という嗜好を、そのままデザイン化してしまったものと解釈すべきであろう。」(p.26)2012/06/29
