出版社内容情報
自分の過去(記憶)をたどりながら現在と交錯する私小説風作品集。
著者の故郷である新潟を舞台に、主人公の幼い頃の「過去」と感染症がはびこる「現在」が交錯する。
人間にとって記憶の本質を問いかける作品。
内容説明
記憶が私をつかまえに来た―。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とみかず
14
かなり久しぶりの藤沢周さんの作品。老齢の男性が、故郷、新潟での記憶と現在の思考をオーバーラップさせながら、朧げな生と死、老いを知る物語。『老いる』ってこういうことなんだなあ。その時になったら実感するんだろうな。と感じさせられる。以前では受け入れない、読みきれないであろう一冊でした。2024/06/15
平坂裕子
2
誰もが心の奥に残っているそれぞれの記憶は、時に優しく時に残酷な想いを抱かせる。記憶に残る風景がとても鮮明に、切ないほど懐かしく、自分の中の記憶も思い出しながら、なんだかうっとりと読み終えた。2024/04/10
CEJZ_
2
1P17行。2024年刊。連作短編集。webで連載されていたことは知っていたが、春陽堂書店から単行本が出ることに「おぉ!!」と注目。新潟市西区の内野(うちの)町と新川(しんかわ)という川、とてもよく知っている。現在の存在と過去の存在、記憶の片隅から甦る仄暗い思い出。わたしは著者と年齢が近いわけではないが、昔の漁師町、内野や新川ならさもありなんと、想像で当時の風景をアタマに思い浮かべていた。藤沢周の連作短編集はどれも味わい深く、今作も一気に読んでしまい、またまた興奮醒めやらぬ状態となった。2024/02/28
いのふみ
1
死者の影を追っていると、いつのまにか自分が死者になっていたかのように錯覚したシーンがあり、はっとさせられた。2025/03/07
Kohn
1
新潟出身で鎌倉在住の還暦を過ぎた主人公の記憶と現実。誰が生きていて、死んでいるのかも分からなくなる。老いるということは、そういうことなのかな。2024/08/14