内容説明
神谷芳雄がめぐり合った恐るべき怪事件。恋人の弘子に不気味な男は言い寄る。その顔はどす黒く、大きな口に敏捷に動く長い舌。獣のようなその男は恩田と名乗り、こともあろうに弘子をさらって惨殺する。警察の捜査も虚しく、恩田は姿をくらます。一年後、神谷の新たな恋人・江川蘭子の前に恩田が現れる。美しい姿が突如として舞台の中央から消えた!美貌の歌姫にまたしても魔の手が迫る…
著者等紹介
江戸川乱歩[エドガワランポ]
明治27年10月21日三重県に生まれる。早稲田大学で経済学を学びながらポーやドイルを読む。様々な職業を経験した後、大正12年、雑誌「新青年」に「二銭銅貨」でデビュー。昭和22年、探偵作家クラブ結成、初代会長に就任。昭和29年、乱歩賞を制定。昭和32年から雑誌「宝石」の編集に携わる。昭和38年、日本推理作家協会が認可され理事長に就任。昭和40年7月28日死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いたろう
63
本作が書かれたのは、「黒蜥蜴」と同時期の昭和9年。人間豹とは、不気味な燐光を放つ目、野獣のような牙、肉食獣のようなざらざらの舌を持ち、二本足より四本足で走る方が早いという獣のような怪人物。その正体は、はっきりとは書かれないが、果たして、人間と豹の合の子なのか? そして、この人間豹が、殺人鬼として、東京中を震え上がらせる。犯罪を重ねる人間豹に対抗できる者はいないのか、と思われたところで、ようやく中盤から、明智小五郎が登場。明智を何度も窮地に立たせる怪人・人間豹は、明智の敵としては、かなり強力な相手なのかも。2023/11/11
cogeleau
0
乱歩特有の怪人対探偵・明智小五郎の探偵活劇の一つ。前半は主人公の青年が気に入っていた女性たちを立て続けに人間豹に奪われるストーリーだが、後半は明智探偵に主役の座を譲って、完全に脇役になる。レビューの女優として以前連作小説に登場していた「江川蘭子」の名前がここにも使われている。性格描写の点では前作のほうが印象深かった。どちらにしても怪人とその一味の手際の良さに対し、警察側の間抜けさが目立ち、それを明智小五郎がカバーする図式になる。乱歩のエロ・グロの趣向には犯人たちの心の奥が見えない不気味さがある。☆2023/11/05