内容説明
小説家人見広介は、自分と瓜二つの旧友、菰田源三郎の急死を知らされる。広介は大富豪の源三郎になりすまし、菰田家の莫大な財産を手に入れるという、荒唐無稽な計画を実行する。そして広介は、無人の孤島に自分が空想した終生の夢のパノラマ島を創りあげた!パノラマ島で展開される妖美な幻覚ともいえるあやしの怪奇譚は、読者を夢幻の世界へと誘い込んでゆく…。表題作のほか、「白昼夢」「鬼」「火縄銃」「接吻」4編を収録。
著者等紹介
江戸川乱歩[エドガワランポ]
1894‐1965。三重県に生まれる。早稲田大学で経済学を学びながらポーやドイルを読む。様々な職業を経験した後、大正12年、雑誌「新青年」に「二銭銅貨」でデビュー。昭和22年、探偵作家クラブ結成、初代会長に就任。昭和29年、乱歩賞を制定。昭和32年から雑誌「宝石」の編集に携わる。昭和38年、日本推理作家協会が認可され理事長に就任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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at-sushi@進め進め魂ごと
78
著者の名を冠した賞作品は結構読んでいながら、御本人の作品は小学生の頃読んだポプラ社の少年探偵団シリーズ以来。表題作で主人公の妄執が造り上げた、変態の謝肉祭の如きパノラマの卒倒しそうな絢爛さ&グロさときたら、子供心に抱いたゾワゾワ感を思い出させる。さすが本家本元の変態や。(←褒めてます) フルCGで映像化したるわ!という気骨のあるクリエイターおらんかなw2020/08/27
青蓮
66
「パノラマ島奇談」の他、「白昼夢」「鬼」「火縄銃」「接吻」収録。「パノラマ島奇談」は乱歩の理想郷的な物語。乱歩ワールド全開です。丸尾末広さんが漫画化した同作品を読んでいたので、それをイメージしながら読みました。「白昼夢」も乱歩特有のぞっとする恐さがあって楽しめました。ラストを飾る「接吻」はユーモアがあって面白かったです。2015/09/03
Vakira
57
小学校6年の頃、少年探偵団の少年向けの探偵小説ではない乱歩さん小説に出会った。男性の夢を追求した妖しくも美しい、そして羨ましいほどの変態的な人間生態観察と犯罪心理に衝撃を受けた。そしてむさぼり読んだ小説の中にあったのがこれ。大人のディズニーランドの様な話だった記憶。今読むとどう感じるのか?変態的感覚を感じたく読んでみた。犯罪ネタは「双生児」と類似?一つの孤島を買い占めディズニーランドの如く改造。島の住人はその世界の演技者だ。キャラクターアクター。人魚、妖精、人間移動車になりきる。もちろんみんな裸女。2024/07/03
ヨーイチ
50
コメント、登録は初めてだが、何回も読んでいる筈。乱歩の偏愛するパノラマ館は他の作品にも登場している。明治の半ば以降浅草とかで流行ったらしい。ウィキペディアをあたると斎藤茂吉の観覧記があったりする。その後映画の流行で廃館したり映画館に転業したらしい。乱歩が生きていたら現代のCGを駆使した「異世界」に狂喜したかも知れない。写真、映画、テレビ、CG、PCゲーム、テーマパーク、VRと並ぶと人間の夢を追求してきた軌跡のような物が朧げに現れてくる。乱歩の夢想した「パノラマ」は今読むと殆ど実現可能だろう。続く2019/10/03
yumiDON
50
読んだのは角川なのでこれではないけど、見当たらなかったのでこれで登録。衝動的に読みたくなり、再読しました。乱歩の中でも大好きなパノラマ島。ひさしぶりに読んだけど、やっぱり好き。幽玄な雰囲気の漂う、文章。背徳と耽美さがないまぜになり、極彩色の悪夢のようなパノラマ島。今回読んで好きだったのは、海底のシーン。妖しげで美しい、映像で見てみたいような、自分の心の中だけに留めたいような気もする。2016/02/20