内容説明
郷田三郎は引っ越したばかりの下宿で、偶然、屋根裏への入口を見つける。異質な空間に魅力を覚えた郷田は、昼夜を問わず屋根裏を「散歩」し、天井の隙間から他人の隠された本性や生活の秘密を盗み見る興奮に酔いしれるようになる。ある日、彼は天井裏の小さな穴を利用した恐ろしい犯罪を思いつく。自殺として片付けられようとしたこの事件を、名探偵明智小五郎が明敏な推理力を発揮する…。ほかに短編6編を収録。
著者等紹介
江戸川乱歩[エドガワランポ]
明治27年10月21日三重県に生まれる。早稲田大学で経済学を学びながらポーやドイルを読む。様々な職業を経験した後、大正12年、雑誌「新青年」に「二銭銅貨」でデビュー。昭和4年の「蜘蛛男」より娯楽雑誌に長編を連載、昭和11年から「怪人二十面相」を少年倶楽部に連載、少年探偵シリーズは晩年まで続く。同時期から評論も多く手がけ、昭和22年、探偵作家クラブ結成、初代会長に就任。昭和29年、乱歩賞を制定。昭和32年から雑誌「宝石」の編集に携わる。昭和38年、日本推理作家協会が認可され理事長に就任。昭和40年7月28日死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
2014年5月1日〜本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
青蓮
75
「屋根裏の散歩者」「鏡地獄」「押絵と旅する男」「火星の運河」「目羅博士の不思議な犯罪」「虫」「疑惑」収録。乱歩の傑作が揃った短編集。どの作品も好きなものばかりで、読んでて楽しかったです。「鏡地獄」の球体の鏡部屋の中がどうなってるのか、想像すると怖い…。「押絵と旅する男」や「虫」の人ならぬ恋が乱歩らしい。2015/06/18
Atsushi Saito
54
初の江戸川乱歩作品。短篇がいくつか。 「屋根裏の散歩者」は密室殺人。登場人数もコンパクトで終わり方も良かった。 「押し絵と旅する男」は押し絵の美しさの描写が綺麗でせつない。なんとも不思議な良作。 「虫」は怖い。後半の柾木の狂いっぷり、それを綴る言葉の相反した美しさ。 昔の作品は読むのに疲れたりするけど、これは思ったよりも読みやすかったです。2016/02/09
じゅむろりん
18
乱歩シリーズの文庫本が数ある中で春陽堂の装画が一番不気味で且つ美しい。そのイメージにピッタリだった作品は「虫」ですね。対人恐怖症で変質的な男が愛情を捧げた女性を殺害した挙句にあのような所業をしようとは。明智小五郎が唯一登場する「屋根裏の散歩者」が一番健全(?)かも。ただ、文字が小さすぎて読むのに一苦労しました。2024/06/08
えっくん
15
★★★★☆表題作「屋根裏の散歩者」など7篇の短編集。再読となる作品も幾つかありましたが、奇異な主人公たちが多く登場します。大正時代~昭和初期にこれらの作品が上梓されており、時代を感じさせる描写はありますが、人間の深層にある異常さ、残酷さは現代にも十分通用する内容と感じました。中でも主人公が殺害した女性の遺体が微生物により蝕み黒ずんでゆく様子を描いた「虫」が、主人公の異常な行動や、顔をしかめたくなるようなグロい描写が印象的です。2017/02/26
那由多
12
夏休みに叔父さんの本棚から拝借。怖いもの見たさと面白さで鳥肌が立った。そのまま『人間椅子』も本棚から出して読み耽る。夏休みの思い出。【2019.8.14 投稿】