内容説明
わたしは２５歳の青年で、丸の内にオフィスのある貿易商Ｓ・Ｋ商会につとめていた。そこでタイピストの可憐な乙女木崎初代とわたしは恋におちた。結婚を約束したわたしに初代は命から二番めに大切な先祖の系図書きを預けた。それは何を意味したか？その初代が密室ともいうべき戸締まりも厳重な自宅の寝室で、何者かに刺殺された！憎い犯人を追うべくわたしは奇妙な友人の深山木幸吉に探偵を依頼した。さっそく深山木は「七宝の花瓶」のナゾをつかんだ。と思う間もなく海水浴場でその深山木も刺殺されてしまう！
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アナーキー靴下
68
好きな乱歩作品としてこれはやはり外せない。明智小五郎こそ出てこないものの、乱歩の魅力全部詰め込んだような作品だと思う。私は乱歩のロマンチック要素が好きなので、初代さんとの恋物語が好き。「一般の美人の標準にはずれた、そのかわりにはわたしだけにはこのうえもない魅力を感じさせる種類の女性であった」こういう、フェチシズムを思わせるような愛着の語りがとても好きだし、恋人の灰のくだりも大好き。結末は好みではないが、それでも最後の一文でぐっと引き締められる。いや本当に、主人公(男)のファム・ファタールっぷりは半端ない。2021/05/10
椛
19
江戸川乱歩作品、初読みでしたが、今まで江戸川乱歩を読まなかったことを後悔。推理に同性愛にすごい話でした。ゾクゾクしながらも読むスピードが衰えず、読後もあまりの面白さに感動しました。これは癖になる。2014/05/27
バ度ホワイト
18
オモシロい～最高のエンターテイメント！どんな恐い話が待ってるかと思ったらまさかの冒険ミステリー。『生き地獄』の章は笑ってしまった。ゾッとする物語の中で唯一ニヤニヤしてまう( ￣▽￣) 2017/07/27
ぷーちゃん
17
江戸川乱歩というと小学校の図書館にあった少年探偵団シリーズを思い出す。表紙絵が何となく小学生の時には恐ろしくてあまりしっかりと読んだという記憶はない…(^-^;)。孤島の鬼は書店に立ち寄った際にふと目にとまった。数ページ冒頭を読むだけで引き込まれてしまった。怪奇的な魅力に引きつけられ「いかんな、これはいかん…」と思いつつもページをめくる手がとまらない。古典的な作品をあまり読んだことのない僕にとって新たな古典作品を読んでみたいと思わせてくれた物語。2013/12/15
TKK
16
以前読んだ乱歩生前のインタビューに「優れた推理小説というのは犯人やトリックがわかってもなお何度でも読みたいと思わせるものだ」とあった。人物造形や物語に魅力あってこそ何十年たって世相が変わってしまっても多くの人に読み継がれるのでしょう。孤島の鬼はそんな乱歩の魅力が余すところなく詰まった長編です。密室トリック、完全犯罪に始まり息もつかせぬ冒険譚。エログロも光り、衆道の恋が苦しくて切なくて、不具者人造のあまりにも特異稀な浅ましさにワクワクし、何度でも何度でも手にしてしまうのです。（再読）2015/02/24
