内容説明
寛永元年(1624)、将軍家光公に許されて創立された深川八幡宮の祭礼は、氏子八町が繰り出す山車が年とともに創意と工夫を凝らし、その美を競う慣例の行事が残されていて、今年は深川随一の材木問屋の葛佐屋半兵衛の提唱による生き人形という前代未聞の趣向で、しかもそれには養女の“深川小町”が藤の花を片手に、桜の花弁の花笠という白拍子の装束で乗ることになっていた…。ところが、肝心の葛佐屋半兵衛が失踪して…。そんな事件に首を突っ込んだのは、これまた深川の名物男―歳は30で女房はなく、“ぐうたら新”の異名で知られる能勢新次郎なる正体不明の貧乏御家人であった…。―深川八幡宮の夏の大祭を巡る事件の謎と由井正雪の影とは…。明朗時代長編作。