内容説明
粉雪が舞っていた。「川甚」と書かれた番傘をかざして待っていた船頭風の男が、宗十郎頭巾の浪人を迎えていきなり惨殺され、その懐中から何物かを奪い盗られていた。浪人者は雪太郎と名乗り、田宮抜刀流の早技を操ったが、それを見ていた男があった。その男は素浪人多仁戒十郎と名乗り、奪った懐中の品物を出せと迫っていた。両者の刃が交わった刹那、朗々の謡い声とともにさらにもう一人、派手な蛇ノ目が浮いて出た。白鞘白面の着流し、貴公子然とした若待は花房主水と名乗った。その花房主水を辻斬りと勘違いしたうり二つの無頼の男があった。奪われた懐中物とは。そして花房主水とは…。―百万両の黄金の謎を秘めた三枚の海図をめぐって起きる事件の行く末は…。