内容説明
市ガ谷御門へ向かって立派な塗り駕籠の行列がやって来る。その行列とすれ違ったかと見た瞬間、浪人が目にも止まらぬ早技で駕籠に乗っていた“お犬さま”を突き殺していた。―時は5代将軍綱吉“犬公方”の治世、宝永5年のことであった。生類憐愍の令と大老柳沢吉保の悪政に対し、敢然として闘いを挑む浪人、それは常に花札を手にする美男侍、猪鹿蝶太郎であった。そして、付き従うは巾着切りの蛍の成吉であった。蛍の成吉に案内された将軍お犬掛り足達橘右衛門の屋敷で、蝶太郎は犬を毒殺された責めを負って切腹した父の仇、毒島左太夫を軌ってくれと娘の志都から依頼された…。―江戸中の犬の掃滅に挑む林崎流夢想の秘剣をふるう猪鹿蝶太郎の活躍はつづく。