内容説明
陽春の午下がり、芝神明宮の境内は宮地芝居と大道芸とで賑わっていた!中でも人気を呼んでいたのは娘居合抜きであった!年のころ十七、八の際立った美貌の娘が真紅の襷をかけて二の腕もあらわに、これまたりりしい若衆の頭上の林檎を一刀両断、瞬時にして刃は鞘の中に納まっているという見事な技であった!二人はいずれ事情のある姉弟と見えた!その娘居合抜きに難癖をつけたのは、地元の博奕打ちで藤造一家の三羽烏の一人で赤牛の弥助だったが、あわやのところへ割って入ったのが白綸子の着流しに白博多の帯、白柄の大小を落とし差しにしたいたって容子のよい深編笠の武士であった!名は雪源之介―!―一年ぶりに江戸へ戻った気まま浪人源之介と由美・金弥姉弟をめぐる事件とは…。