内容説明
お馬係三十俵二人扶持の軽輩の見である若侍桜木伝太郎は平々凡々の日日を送っていた。ある日、そんな伝太郎が上役に呼ばれて、上士の家柄の若者のみを対象にした催しである紅白試合に、晴れて出場剣士の一人に選ばれたことを告げられ、夢かとばかりに驚喜した。しかし、好事魔多しの喩えどおりに、次席家老の双子の倅から呼び出しを受けて城下外れの念仏ガ原へと出向いた伝太郎は、兄弟とその仲間の侍たちの襲撃に遭い、思わず相手方に斬りつけてしまった。用人村上久兵衛は伝太郎を江戸へと逃がしてくれたが、訪ねた下邸の牢に入れられてしまった。薄内は国家老斉木弾正と江戸家老笹塚主馬とが対立、現薄主の隠居が騒動の因になっていた。―揺れ動く争いに、伝太郎の正義の剣は揮われた。