内容説明
「原初状態」「無知のヴェール」といった道具立てで正義の二原理を導きだしてみせたロールズ。しかしそれはサンデルらとの新たな論争の始まりだった。現代リベラリズムの哲学的基礎を築いた哲学者の葛藤。価値の多元性を許容する「政治的リベラリズム」の構想。
目次
序章 「正義」と“Justice”―似て非なるもの
第1章 なぜ「正義」を問題にしたのか
第2章 「自由」と「平等」の両立をめざして―『正義論』の世界
第3章 ロールズの変容―『正義論』への批判を受けて
第4章 「正義」の射程はどこまでか―「政治的リベラリズム」の戦略
終章 「正義」のゆくえ―ロールズが切り開いた地平から
著者等紹介
仲正昌樹[ナカマサマサキ]
1963年、広島県生まれ。東京大学総合文化研究科地域文化研究博士課程修了(学術博士)。現在、金沢大学法学類教授。文学や政治、法、歴史などの領域で、アクチュアリティの高い言論活動を展開している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夜間飛行
174
正義の意味を間違えてはいけない。ロールズは個人の欲求を前提にし、ただしそれはカント的理性に発する正義感覚を備えた人格が幸福を求める欲だとして、これを「善の構想」といっている。そして自由と平等を損わずに、全ての当事者の〝善〟に資するようなスキーマを「公正としての正義」といった。その価値は双方向の互恵性にある。なるほど「慈愛」のような包括的価値を先に掲げてしまうと、正義は一方向の効率性に還元され互恵性は台無しになるだろう。ロールズの場合、博愛は(最も不運な人々の福利を向上させる)第二原理に自ずと含まれるのだ。2023/11/05
しんすけ
18
なぜロールズに惹かれるのか。一昨年までは、それは漠然としたものだった。 『正義論』は一通り読んだが、読んだという言葉には憚りを感じる。 昨年からカントの著作を集中的に読みだしたが、そこから上の疑問が解けるような気がしてきた。それはロールズの心を読み取ることでもあった。 二十世紀におけるカントの最大の後継者がロールズだったと、極言するも今では可能になっている。 本書でもロールズをカント主義者と命名し、その理由として下記を記載している。 2024/04/04
Hayato Shimabukuro
1
『正義論』に至るまでの積み重ねから始まり、『正義論』や『政治的リベラリズム』、『公正としての正義』『万民の法』など、ロールズの著作や論文集を、他の政治哲学者達の思想とも結びつけて紹介した本。内容は濃密で、ロールズ入門の最初の一冊としては敷居が高い。しかし、ロールズの思想についてある程度勉強していると、視野が広がる。参考文献が豊富。2023/09/29
yasu7777
1
★★★☆☆ 練馬2750-832021/04/24
Go Extreme
0
正義≠Justice ロールズ正義論のインパクト メタ倫理学 善→正義 正義の原理探求 功利主義の歴史・スタンス 功利主義:2つのルール観 正義の2つの原理 功利主義との対決 人格に備わった正義感 分配的正義:ロールズの経済観・格差原理の導入・政府の役割 市民的不服従 無知のヴェール導入 市民的不服従の3条件 原初状態という仮説 反省的均衡 正義の制度化 正義と善の関係 マクシミン原理 リバタリアンの攻勢 自由の優先は自明か ロールズのカント主義的転回 形而上学→政治 正義の射程はどこまでか 正義のゆくえ2020/12/13