内容説明
実体や普遍といった哲学の大問題ではなく、マイナーな対象にこそ存在の秘密は開示される。私たちの身近にありながら、存在と無、具体と抽象、物質と非物質、「もの」と「こと」のはざまでうごめく穴と境界という奇妙なやつらの分析をとおして、読者を存在論の世界へと導く、気鋭の研究者の野心的試み。
目次
第1章 存在のかたち(現代型而上学をとりまく事情と存在論;三つの現代的カテゴリー論;現代哲学における「存在論的転回」)
第2章 穴(穴は存在するか;穴は回るか;穴とは何ものか・1―物体としての穴;穴とは何ものか・2―欠如としての穴;穴とは何ものか・3―依存対象としての穴)
第3章 境界(なぜ境界は重要なのか・1―実体の独立性;なぜ境界は重要なのか・2―実体の自己連結性;なぜ境界は重要なのか・3―「触れ合い」の謎;境界とは何ものか・1―無としての境界;境界とは何ものか・2―抽象的対象としての境界;境界とは何ものか・3―具体的対象としての境界)
付録 形式存在論の現代的展開(哲学的フォーマル・オントロジー;工学的フォーマル・オントロジー;“”意表的な形式的関係)
著者等紹介
加地大介[カチダイスケ]
1960年、愛知県に生まれる。東京大学教養学部(科学史科学哲学分科)卒業、東京大学人文科学研究科博士課程(哲学専攻)単位取得退学。現在、埼玉大学教養学部教養学科(哲学歴史講座)教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Ex libris 毒餃子
6
分析哲学を経由してカテゴリー論を武器に穴と境界のオントロジーを論じた本。僕には太刀打ちできなかった2015/09/14
1
「穴」と、それを問おうとするとついて回る「境界」のカテゴリーについて現代形而上学の視点から説く本。穴というのはそこに物体が存在しないという特徴を持つある種奇妙な存在で、そこからスタートして一冊の書籍となるくらいの話題なのだ。森羅万象を一つの体系で説明するにはこのようなケースが問題になるのは必然だが、それゆえどう扱うかああでもないこうでもないと議論するのが面白い。形而上学の応用にかかる書籍は少ない印象で、かつ形而上学はトップダウン…公理論的な話になりがちな中、このような具体例からのアプローチは貴重だと思う。2024/09/27
kuboji
1
穴や境界についてなんて考えたこともなかったけれど、これらについてこれだけ考えることができるのか、こんなにも悩ましい存在なのかと驚いた。やはり難しいと思うところも多々あるものの、穴は回転するか?といった議論は面白かった。2018/10/31
★
1
穴と境界というマイナーな対象に関する存在論的考察。当初はカテゴリー論と形式存在論を紹介している第一章と第四章目当てで手に入れたため、本書の主題である穴と境界の存在論を扱う第二章と第三章にはあまり興味がなかった。しかしながら、読み進めていくうちに「穴と境界という非物理的な対象を存在論の中にどのように位置づけるか」という問題の重要性、そしてこの問題をめぐる論争の面白さに惹かれ、夢中になって読んでしまった。あまりにもニッチなテーマなので万人にお勧めは出来ないけれど、とても面白い哲学書。2014/06/28
theseus
1
「常識」の立場から、穴や境界など日常的思考に現れつつもあいまいに捉えられている対象について、分析的形而上学における論理的・形而上学的探究を紹介した本。読了してみたものの、量子物理学などミクロな立場や、宇宙論などの巨視的な立場ではなく、常識の立場から論理的厳密に形而上学的探究をすることの意義はまだはっきりつかめなかった。「穴」は良く知らないが、「境界」についてはトポロジーなど数学的探究の成果を踏まえることで、より一層意義ある研究ができるだろう。しかし、この分野への入門書としては極めて良く書かれていると思う。2010/09/12




