内容説明
プラトンが歪めてきたソクラテスの姿。しかし、これまで重視されなかったクセノポンの著作には、その本当の思想と人となりがいきいきと描かれていた。善美を求め、政治から距離を置き、人の知の限界を悟り、はたまた宴会の最中に突然歌いだし、へんてこな体操を考案するソクラテス。これが真のソクラテスだ!クセノポンの『ソクラテスの思い出』『ソクラテスの弁明』『饗宴』『家政』、それにプラトンの作品ではめずらしくソクラテスの肉声を伝えると思われる『ソクラテスの弁明』を加えて、重要箇所を翻訳し、丁寧な註釈を加えつつ、それらの証言からソクラテスの思想と人となりを再現。いまよみがえる哲学の祖の真の姿。
目次
第1章 神託と不惑の人生
第2章 善美な夫に善美な妻―『家政』(1)
第3章 家僕と家財の管理は妻の仕事―『家政』(2)
第4章 農業は人に優しい仕事―『家政』(3)
第5章 人生自慢の宴―『饗宴』(1)
第6章 愛の教説―『饗宴』(2)
第7章 善き家政家は善美な人―『家政』(4)
第8章 ソクラテスが生を賭けた「人間並みの知恵」
著者等紹介
八木雄二[ヤギユウジ]
1952年、東京生まれ。慶應義塾大学大学院哲学専攻博士課程修了。文学博士。専門はドゥンス・スコトゥスの哲学。現在、清泉女子大学ほか非常勤講師、東京港グリーンボランティア代表。東京キリスト教神学研究所所長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みのくま
5
本書で主張されるように、プラトンのソクラテス像は創作されたものである事は確かだろう。しかしクセノポンが真実のソクラテスを伝えているかは大いに疑問である。本書で取り上げられているクセノポン「家政」や「饗宴」を読んでも、プラトンへの対抗意識やクセノポンの興味が強く反映されている様にしか読めない。更にこれらのクセノポンの作品は正直つまらない。そこには教える→教えられる関係しかない。これらの作品で語られる農業やペルシアについての話題からはソクラテスの実像ではなくクセノポンの実像しか感じる事ができないのではないか。2024/04/05
Go Extreme
1
プラトン弁明重視へ疑問 クセノポン作品 ソクラテス真実 いきいき伝わるソクラテス カイレポン神託 有名化 神託謎解き 哲学始点 嫌いな人に聞く決意 家政 イスコマコスの知恵 整然 美 役立つ 善美な人 イスコマコス ダイモーンの声 幻聴? 役立つは美しい 価値観 無知の自覚 哲学核心 無知を自覚せぬ誤謬 死恐れぬ正義の勇気 ソクラテス弁明 3段階 愛による善美への道 ソクラテス知恵 支配者無用 ヘルモゲネス クセノポン情報源 プラトンと違うソクラテス クセノポンから実像探求2025/04/24
Yohei Kameya
0
前回読んだソクラテス本と同じで、プラトンの思考の影響のない、生身のソクラテスの対話。 色々な善美な人間(人徳者)より教えや教訓を乞い 自分の人生を豊かにしようとする神託前のソクラテス・神託後の出来るだけ、自分の知を人に役立たてもらおうとするソクラテスの対比が面白い。 ソクラテスにとっての知とはよりよく生きていく為の知である。 2021/07/31