内容説明
「修養」とはいったい何か。修行や稽古や養生とは、どう違うのか。それは「生きる英知」であるのか。日本的東洋的心性のありかを探り、これからの我々の未来を展望する、刮目の書。
目次
1 修養の風景(修養の語りは多様である;明治期の「修養論」と江戸期の「庶民道徳」)
2 社会の中で―修養の古典的ナラティヴ(修養は「出世の心得」―朱子学の構図;修養は必要ない―荻生徂徠の論法;正しくありたい―中江藤樹の願い;日常の営みが「道」である―伊藤仁斎のたどり着いた地平;天地と一体化した心―石田梅岩の教えと秘められた可能性;修養は「規律訓練dicipline」か)
3 修養の言い分―周辺・裏方・土台(修行―修行は厳しい、では修養は;養生―修養はかつて養生であった;稽古―修養は稽古の土台である)
4 修養の構造(修養とはどういうことか―暫定的な整理の試み;途絶えてしまったのか―現代日本の中で)
著者等紹介
西平直[ニシヒラタダシ]
1957年生まれ。信州大学、東京都立大学、東京大学に学び、立教大学、東京大学に勤務の後、2007年より京都大学教育学研究科教授。専門は、教育人間学、死生学、哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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キョートマン
7
「修養」を中心に「修行」「養生」「稽古」といった日本の思想の根幹にあるものを考察していく。大した違いがないように感じていたが、そこには深い思想の違いがあり興味深かった。2020/07/13
GX
4
「修行」「稽古」「養生」などとの違い、類似点に基づき、「修養」の概念・意義を解説しています。日々の暮らし全体が「修養」の機会であり、そのなかに、「修行」「稽古」「養生」それぞれの時間があるのだと思います。「修養」は「稽古」の土台、という言葉を覚えておきたいと思います。2020/07/04
マウンテンゴリラ
4
今の時代には、ほとんど馴染みがないが、何か忘れてはならない普遍的な概念を伝える言葉。本書を目にした時、漠然とではあるが、そんな気がして、惹かれるものがあった。仏教で言う修行という言葉とは何かが違うし、ましてや、他力本願という言葉とは、明らかに違う。本書を読んで、やはりそれは、儒教の伝統に馴染みが深い言葉であるということが納得出来た。しかし、一概に儒教といっても、朱子学を評価基準に、様々な思想的展開が見られ、近世日本人の学問好きの気風が窺われるようであった。それに反して今の日本人は如何だろう。→(2) 2020/06/25
こけこ
2
「稽古」「養生」「慣習」「教養」と何が違うのか、なんとなくわかった。修養は今こそ必要だと思う。2021/02/18
可不可
1
■『稽古の思想』→『修養の思想』→『養生の思想』の三部作を順に読んでいるが、その二作目。■前著『稽古の思想』とちがって、こちらの本は、油絵のようだ。画題を描こうとして何度も筆を塗り重ねるように議論が進む……。やがて見えてきた全体像が、第11章だ。この章は、ここに至るまでの1~10章の整理である。■ところで、「修養」という言葉だが、現代では「自己啓発」という言葉がその代わりを務めているのではないだろうか。しかし、著者は、「自己啓発」という言葉については一言も触れていない。これは、どうしたことだろう……。2022/08/18