出版社内容情報
山本 ひろ子[ヤマモト ヒロコ]
著・文・その他
目次
1(摩多羅神と夢の女人―壇上遊戯としての恋)
2(毛越寺の二十日夜祭;毛越寺の摩多羅神と芸能―「唐拍子」をめぐって)
3(摩多羅神紀行―服部幸雄『宿神論』の向こうへ;出雲の摩多羅神紀行(前篇)―遙かなる中世へ ほか)
4(我らいかなる縁ありて今この神に仕ふらん―常行堂と結社の神)
5(大いなる部屋―修正会から三河大神楽へ)
著者等紹介
山本ひろ子[ヤマモトヒロコ]
1946年生まれ。早稲田大学第一文学部史学科中退。日本宗教思想史。私塾「成城寺小屋講座」を主宰。和光大学表現学部名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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syaori
64
摩多羅神に関する論考集。摩多良神は主に天台系寺院の常行堂(阿弥陀仏を本尊とする念仏道場)に奉斎されている「日本古来の神でもなく、経典に記された仏菩薩でもない」出自の知れない神。本書では日光山などの常行堂の摩多羅神祭祀から、豊穣や歌舞の神、またスサノオとも習合する同神を追ってゆきます。最後は修法を行う堂に対し堂衆たちの芸能と饗宴の場となる「部屋」が春神事や芸能といったもので三河大神楽の神部屋などと繋がって、祭祀に関わる人々が神と「遊ぶ」「ありやの浄土」が現出され、「中世芸能の鼓動」が聞こえてくるようでした。2025/04/09
∃.狂茶党
19
民俗学とか歴史、科学の本などは、ミステリ的に謎解きと謎の構築を楽しんでしまう。 謎の構築とは着眼点なのだと思う。 『異神』の続編的な本なので、『異神』を前提としたような部分が多々ある。未読なので早く復刊して欲しい。 本書は、摩多羅神について、『異神』を書いた後に知り得たことなどを中心にまとめられている。 執筆期間は三十年を超えるらしい。 サブタイトルはいろんな縁があってこの本は成ったという意味もある。 読んでおくべき本は多いが、ここを入り口にしてももちろん構わない。2023/07/21
mittsko
4
最高の「在野」!国家の権力機構と時代の主潮流に対し、つねに緊張関係をたもとうとする、立派な知性と肉体… 山本先生にお会いしたことはないが、そういったものを幻視させられる ※ いわゆる中世神話に宿るものを、素人にも遠くに見せてくれる「探求の旅」の報告。牛頭天王について調べていくなか「異神」という範疇が提案されていることを知り、そこから本書にたどり着いた(同著者『異神』入手済み、未読)。20年余り(著者はなぜか30年余りと書く)にわたり各所で書かれた文章に、書きおろし数点を加え集成した一冊。2022年8月刊2024/01/10
アル
1
先人の研究内容に触れ、「後戸の護法神」という従来の観点に異議を唱え、常行堂の「コク部屋」を始めとする「部屋」に注目し……と多様な観点から語られる内容は、まさに摩多羅神に擬された多面性を思わせる。 読むのに非常に時間がかかったが別に悪文というわけではなく、密度の高さに読み飛ばすのが難しいから。 同著者の『異神』に収録されていた摩多羅神はやや恐ろしげな感じがしていたが、本書はカバーにも出ている島根県清水寺の摩多羅神像のように、どこか朗らかな摩多羅神の印象を持った。2023/02/09
momen
0
中国がルーツといわれる謎の神・摩多羅神及び摩多羅神に関係ありそうな祭祀の論考を収録。貴重な記録や絵図など丁寧に紹介され密度が濃い内容だが、多少文章やプロット構成は煩雑。神社仏閣・花祭・大神楽などで行われた祭祀の手順、特に「部屋」と呼ばれるバックヤードで限られた者のみにより行われる秘密の祭祀の存在など非常に興味深い。叡山から民間まで様々な伝承が混ざり合い出来上がったローカル信仰の存在が見て取れる。元々現代にまで伝わる記録が少ないため、明確な結論は今後の研究を俟つ部分が大きいそう。今後の進展が楽しみ。2024/12/20