出版社内容情報
空海が密教に次いで評価した華厳の思想は、教主や世界観などで共通点も多い。仏身・言語観・世界観・成仏観・慈悲の観点から教理上の比較研究をした第一部と代表作『十住心論』第九極無自性住心を逐文解説した第二部からなる空海思想にさらに踏み込んだ大著。
【目次】
まえがき
第一部 空海と華厳教学
第一章 別教一乗と九顕十密
はじめに
一 同教一乗の世界
二 別教一乗の世界――性海果分
三 別教一乗――縁起因分・分相門
四 別教一乗――縁起因分・該摂門
五 空海の九顕十密の立場
六 『大日経』「住心品」序分の説
七 『十住心論』「付法の伝来」
八 『十住心論』「秘密趣」の説
まとめ
第二章 十身仏と四種法身
はじめに
一 大乗仏教の仏身論
二 如来蔵思想の仏身論
三 華厳宗の仏身論
四 十身論は華厳宗独自の仏身論
五 密教の仏身論――四身論
六 四身の内容――『弁顕密二教論』の場合
七 四身の内容――『声字実相義』の場合
八 仏身の本有説
九 華厳の十身論と密教の四身論
十 空海における三種世間
十一 仏体としての三種世間
まとめ
第三章 果分不可説と果分可説
はじめに
一 果分不可説と果分可説
二 果分可説の諸教証
三 『金剛頂経』系と『大日経』の自性身説法説
四 受用身説法等について
五 音声言語から、五感言語へ
六 三密による説法
七 華厳の「果分不可説」説再考
九 『華厳五教章』が明かす別教一乗の説法
第四章 事事無礙法界と曼荼羅世界
はじめに
一 十玄門の理路――異体と同体
二 十玄門の理路 相入の論理
三 十玄門の理路――相即の論理
四 十玄門の理路――一中多・多中一
五 十玄門の理路――一即多・多即一
六 十玄門の教義
七 印陀羅微細境界門について
八 空海の曼荼羅思想
九 自心の源底としての曼荼羅
十 『即身成仏義』の人間観・世界観
十一 『十住心論』「帰敬頌」の世界
まとめ
第五章 三生成仏と即身成仏
はじめに
一 華厳宗の三生成仏
二 他の一生成仏の例
三 『五教章』「十玄門」の「諸法相即自在門」
四 「諸法相即自在門」における六種問答(第三問答)
五 密教の即身成仏――『即身成仏義』の教証
六 「理具成仏・加持成仏・顕得成仏」の三義
まとめ
第六章 「如来大悲の法門」としての密教について
一 『華厳経』「性起品」における「如来大悲の法門」
二 『如来蔵経』に受け継がれた同旨の説
三 『法華経』の一乗思想と如来大悲の法門
四 『秘蔵宝鑰』における如来大悲の法門
五 『十住心論』における同旨の教説
六 空海のその他の著作における同旨の教説
七 『秘蔵記』における「三昧耶」の説明
まとめ
第七章 空海における