出版社内容情報
いま東洋の理想とは。文明の大転換期に、全ての日本人に向けて、「温かなこころ」を基に生きることの大切さを語る、名著の新装版。
内容説明
いま未曾有の転換期に、我々はどう生きればよいのか。人間のみなもとに立ち帰り、温かな心を生きることの大切さを語る。
目次
第1章 温かなこころ(仏像のこころ;灯をともすもの慈悲ということ;時空をこえる理想;温かなこころの実現)
第2章 安らぎのこころ(悟りについて;仏教の四つの真理;宇宙のこころを具現する)
第3章 東洋のこころ(アジアに広まった華厳経;縁起ということ―華厳の哲学;人を人として保つもの;宗教について;“宗教”のめざすもの;平和への理想)
第4章 道を求めるこころ(こころを失なった日本人;美しく清らかなもの;道を求める;普遍的な精神)
著者等紹介
中村元[ナカムラハジメ]
1912年島根県松江市に生まれる。1936年東京大学文学部印度哲学科卒。1943年文学博士。1954年東京大学教授。1970年財団法人東方研究会設立。1973年東方学院設立、学院長に就任。東京大学名誉教授。1977年文化勲章受章。1984年勲一等瑞宝章受章。1999年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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roughfractus02
6
1995年の阪神淡路大震災とオウム事件後、最晩年の著者は憎しみのない愛としての慈悲を説く。愛が憎しみを伴うのは自己が発話する言葉を心と捉えるからだ。一方慈悲は「無財の布施」(好ましい眼差しを向け、和やかな顔で接し、優しい言葉をかけ、尊敬の態度を示し、良いことをしようと努め、席を譲り、客をもてなす)という行為で示す。我執を去るという困難を理想とすると、行為が他との間に心を作り、それら関係の総称が宇宙となる。日向ぼっこする私は宇宙を介して遠く離れた太陽と関係し、光を浴びてここにある。光とは慈悲そのものである。2021/04/12