内容説明
後期密教の源流となる経典から、多面多臂の忿怒尊が主役となる代表的な聖典、さらには名号の読誦、古代インド人の冥界観、瞑想による成就法を示す聖典に、大注釈家の儀軌と手引き書まで網羅しわかりやすく解説。
目次
序 忿怒の仏が放つ宇宙エネルギー―父タントラと成就法集成
1 『真実摂経』後期密教の源流
2 『秘密集会タントラ』欲を生かし育てる
3 『幻化網タントラ』怒りの仏が迷いの幻網を打ち破る
4 『ヤマーリ・タントラ』と『マハーヴァジュラバイラヴァ・タントラ』呪殺の冥王たち
5 『ナーマサンギーティ』読経から瞑想へ
6 『ドゥルガティパリショーダナ・タントラ』死者の救済と後生安楽を目指して
7 『サーダナマーラー』成就法の花環
8 アバヤーカラグプタの密教儀軌三部作と『阿闍梨所作集成』インド密教儀礼の集大成
著者等紹介
松長有慶[マツナガユウケイ]
1929年、和歌山県生まれ。東北大学大学院博士課程修了。文学博士。高野山大学教授、同大学学長、同大学密教文化研究所所長等を経て、高野山大学名誉教授。専門は密教学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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くり坊
1
『秘密集会タントラ』に関する解説を、松長有慶氏による説明にて読みました。副題は「欲を生かし育てる」です。「このように人間の欲望が生存にとって完全に否認しえないものでであるならば、欲望の排除に無駄なエネルギーを費やすよりも、それが持つ生命力を積極的に活用することによって、悟りを目指すように方向転換を図ったほうが賢明ではないか。こういった観点から、代表的な経典の一つである『維摩経』は、教条主義的に欲望の否認にこだわる出家修行者を嘲笑し、欲望を生かしつつ涅槃を求める方向性を示そうとしている。」(39頁)2023/05/30