出版社内容情報
大乗仏教とアジアの他宗教、文化との関係に焦点を当てる。ヒンドゥー教や文学など、幅広い視野から大乗仏教の与えた影響を論究する。
内容説明
本巻は、アジアの他宗教、文化へと視野を広げ、従来の文献学に基づく仏教研究に対して、新しい視点から大乗仏教研究の可能性を試みる。
目次
第1章 仏教文献学から仏教考古学へ―インド仏教における聖者の傍らへの埋葬とブッダの現存性
第2章 ヒンドゥー儀礼と仏教儀礼
第3章 密教とシヴァ教
第4章 曼荼羅とは何か
第5章 イスラームと大乗仏教―仏教とイスラームの連続と非連続
第6章 疑経をめぐる問題―経典の物語化と改作
第7章 仏教絵画と宮廷―南宋・馬遠「禅宗祖師図」を中心に
第8章 漢訳仏典と文学
第9章 中世神道=「日本のヒンドゥー教?」論―日本文化史における「インド」
第10章 大乗非仏説論から大乗仏教成立論へ―近代日本の大乗仏教言説
著者等紹介
桂紹隆[カツラショウリュウ]
1944年、滋賀県生まれ。トロント大学大学院博士課程修了(Ph.D)。文学博士(京都大学)。広島大学名誉教授。現在、龍谷大学特任教授
末木文美士[スエキフミヒコ]
1949年、山梨県生まれ。東京大学大学院博士課程修了。博士(文学)。東京大学文学部教授を経て、国際日本文化研究センター教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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bapaksejahtera
10
本巻は興味を引くテーマが多く面白く読んだ。特に冒頭、仏教考古学から原初仏教に新たな観点を進めるGショペン論文抄訳が目を引く。釈尊入滅後程無い時代、富者の寄進による僧伽は美々しく飾られ信者の参拝を誘ったという別論文の記憶がある。本書でも仏陀を始め聖者縁地の仏塔跡から、信者の遺骨が多数発掘されたとの報告があり、初期仏教から死者供養が盛んだった事が判る。また印度での仏教の衰退は、ヒンドゥとのせめぎ合いの中、スーフィズムとの穏健な交代も見られたとの論文は、東南アジア諸国でのイスラムの浸透史とも思い合わせ興味深い。2024/10/22
マウンテンゴリラ
2
いよいよシリーズの最終巻となったが、読み終えたという達成感を得るには少し高いハードルであったというのが正直な感想である。本巻に限って言えば、仏教が何故発祥地のインドにおいて衰退し、主にイスラム教にとって代わられたのか、また、密教の隆盛とヒンドゥー教との関係に関する論考などに興味深いものを感じた。そして、最後の総括とも言える論考では、再び大乗仏教とは何かという問いに帰って来たように感じた。そこに、語り尽くすことのできない可能性と、過去の過ちをいかに乗り越えるかといった課題が提示されているようにも映じた。2014/11/04