内容説明
全財産を持ち馬にかけて失敗したチャールズ・ラスリンは、優勝馬の持ち主で未亡人のケイトに雇われ、やがて年上の彼女と結婚して快適なカントリーライフを楽しんでいた。が、ケイトが夢遊病者と知ったころ、彼のそばに魅力的な若い女性が現れた。ケイトが手すりから落下して死亡するが、警察長は事故死と判断する。疑問を抱いた警視の捜査が続くうち、ケイトの秘書が…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
本木英朗
24
再読。遺作『リトモア誘拐事件』のひとつ前に発表された作品。作者らしく展開は地味ながら、錯綜した人間関係の描写により生じる緊迫感が、リーダビリティを保証する。ある程度容疑者の数が絞られた段階で警察側にも捜査方針を巡る対立が生じ、そこへ追い打ちをかける新たな展開が。これでだいたい全体の半分だ。読者に提示される「あからさまに怪しい容疑者」は本当に有罪なのか否か。主たる謎はこれだけだが、無駄のないシンプルな構造が、鋭い切っ先となり読者を襲うだろう。結末の趣向については、後々のことを思うと初読時より印象がよかった。2017/05/22
koo
6
破産寸前のチャールズが富豪の未亡人に見初められ結婚したがその妻が邸内で不審な転落死した事件をチャールズ視点で描かれるストーリー、証拠がなくチャールズが犯人なのか事故死なのかが明らかにされないまま終盤まで進行するのは本来退屈なのですが既読作の中では作品設定もわかりやすくキャラ造形もわかりやすく1番読みやすかったです。このプロットなら長編じゃなく中編にして欲しかったとも思いますが読後感は悪くなかったですね、読みやすいのが何よりです。2024/02/16
madhatter
1
本作は、倒叙か正統派本格推理か判断がつかぬまま、話が展開する。つまりラスリンは妻を殺したのか、他に犯人がいるのか、単なる事故死で皮肉な状況が彼を犯人に見せるのか、そこからして曖昧なのだ。状況に対する彼の奇妙な実直さ、二転三転する展開、ウエイドの筆力(この人は本当に書き方が上手い)も相俟って、読者はこの曖昧さに翻弄されつつも、それ故に物語に引き込まれてゆく。そして、事件は地味に解決したと思いきや、さりげなくも効果的なオチを迎える…とにかく面白すぎる作品。2012/02/27
kanamori
0
☆☆★2013/09/27
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- 和書
- 原色ベゴニア写真集