内容説明
1143年ホーモンドとシュルーズベリの修道院間で所有地の交換が行われ、後日そこを耕作しているとき鋤が女性の黒髪を掘り起こした。急遽呼ばれたカドフェルはこの女性が誰であるか調べを進める。この土地は以前、荘園主からホーモンド修道院へ寄進されたもので、今はシュルーズベリの修道士となつているルアルドが陶工として借りていた畑である、その妻が行方知れずになっていた。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
真理そら
39
再読。シリーズ第17弾。修道士ルアルドが陶工として借りていた畑が修道院間の交換でシュルーズベリの所有になった。さっそく耕し始めたら黒髪の女性の白骨死体が出てきた。聖書的には「陶工の畑」は不吉なニュアンスをもつらしいのでその方向の知識があれば更に興味深く読めただろう。今回も若者の愛の物語はあるが、それ以上に中年男女の欲望がインパクトがある。ルアルドは希望通り宗教生活に入れて幸せだろうが、異郷に来てルアルドだけを見つめて生きてきた妻には酷だった。娘を縁から蹴り落として出家したと言われる西行を思い浮かべたりした2019/12/18
geshi
22
地中から掘り出された女性の死体は誰なのか?という謎が幹となって話を貫き、その身元によって疑いが移り変わるストーリーテリングに乗せられた。死体によってブラザー・ルアルドやサリエンが己の過去と向き合い、自身が選ぶべき道は修道院にあるのか、俗性にあるのかと問うのが、宗教色を帯びたシリーズらしい。毎度の如く入れるロマンス要素が付け足し感あるな、とか、カドフェルが悩める若者と直接関わらないから必要性薄いな、とは思っちゃう。神の正義はどこにあるのかと苦味が読後に残る。2025/12/22
鐵太郎
15
陶工の土地とは、聖書の裏切り者ユダが、主イエスを売った銀貨で購ったとされる土地のこと。イエスが処刑されたあと、報酬として与えられていた銀貨30枚を神の神殿に捨ててユダは首をつったのですが、神殿の祭司はこの汚れた金を扱いかね、陶器職人の土地を買って墓地にしたとのこと。この物語は、かつて陶工が耕していた土地を修道院が手に入れ、畑として使うことで起きた事件の物語。畑の中から掘り出された黒髪の女の死体。彼女は何者か。過去に何があったのか。もの静かな修道士ブラザー・ルアルドの、悲しい過去がよみがえります。2005/04/30
クイックラック
4
シリーズ17冊目の今作では現れた遺体から誰かを断定することも死因を追求するのも難しい状態からスタート。カドフェルさんの難易度がどんどん上がっていく。ただそれが紐解かれていくさまは読んでいて爽快。キリスト教徒ではないので知らなかったけれど、陶工の畑は裏切りの畑という有名な聖書の一節があるんだとか。毎度ながら敬虔なキリスト教社会を知らないと描けない作品で面白い。「代価はバラ一輪」に続いて、最後の一文に心震えた。2021/06/15
蝉の一生
2
これまでカドフェル・シリーズでは、現代の法律的にはともかく、倫理的にはスッキリした結末ばかりでした。しかし、このお話では、真相がわかったときに、政治的な判断も必要な執行長官とは異なる立場である修道院長からしばらく言葉が出なかったように、倫理的に許容されうるのか難しく感じました。俗世における個人の幸せ追求と修道請願が相入れず、配偶者が犠牲になる制度矛盾もさることながら、そもそも、問題が発生しているにもかかわらず、全てを放置して、修道請願するという感覚が、信仰心の薄い私に読了後も残された謎でした。2021/08/07




