内容説明
シュルーズベリーにおだやかな冬の日が戻ってきたある日、修道院の客人になった荘園主が毒殺された。料理に仕込まれたのは猛毒トリカブト―俗に言う“修道士の頭巾”を成分とする油薬でカドフェルが調合したものだった。男には実子がなく、しかも連れ子を持つ男の妻は若き日のカドフェルが愛したリチルディスだった。彼女の子にかかった疑いを晴らすためカドフェルは奔走する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
真理そら
44
再読。シリーズ第3弾。タイトルから殺人の手段は明白。リチルディスの登場に心揺らぐカドフェル。見習い修道士マークがいい味出してる。イングランドとウェールズの法律の違い等が本来善良な犯人の心に悪魔を宿らせてしまった。この巻は被害者に全く同情できないのがすごい。2019/12/03
geshi
30
ミステリーとカドフェルの過去の掘り下げの作品。かつての恋人の息子にかかった殺人容疑を晴らす調査をしながら、「彼が自分の子供だったかも」と想像するカドフェルに陰影が生まれて、よりキャラクターとして好きになる。大ピンチからの脱走劇やカドフェルにかかる疑惑などサスペンスを失わせないストーリーテリングが巧み。動機から犯人が分かる推理はちょっと頂けないが、時代ミステリーらしい要素を絡めている部分が面白みになってる。ラストのカドフェルの慨嘆が修道士を選んだ自分を無理に肯定しているようでちょっと切ない。2022/05/05
鐵太郎
16
時は1138年、12月初めの朝。「修道士の頭巾」とは、その形からトリカブトのことを言うそうです。これによって殺された地主は、自分の荘園を修道院に寄進し、修道院の中でひっそり老後を過ごしたかったそうですが、そうなると家族にとってはたまったものではない。それが原因か。カドフェルは新しい助手のマークと共に事件を捜査することになります。彼が俗世での名乗りを言ったのはこの巻。「トレヴリューはダーヴィズのメイリール・アプ・カドフェルと名乗ることもあります」2005/02/06
のざきち
11
1981年CWAシルバーダガー賞受賞作で、修道士カドフェルシリーズ第三作。初読。真相の意外性には欠けるかもしれませんが、12世紀の英国修道院の雰囲気や登場人物が魅力的に描かれ(特にカドフェルが修道士でありながらも結構人間臭さが滲み出ていて)、シリーズ未読でも十分楽しめた作品でした。他のシリーズ作品は…見つけたら読んでみようかな。2020/03/08
ヨッシー
7
ミステリとしての良さもありますが、むしろキリスト教的慈愛にあふれた探偵物、として読みたいですよね。ヘリバート院長、最後はやってくれました(笑)道徳的に素晴らしくも、最後修道士としての道に後悔を感じていなくもない、カドフェルの人間臭い様子に惹かれます。2010/01/31