内容説明
生と死、動物と人間、現実と夢想、地上と天上が、たがいに呼びかけあうシュペルヴィエル的宇宙へ誘う。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kurumi
1
ただ一つの願いを想うが為に、自らが不幸になっても構わない。良く言えば「思慮深く」、悪く言えば「欲深い」。どちらか一方に傾けすぎると、バランスは忽ち崩れ、その先の幸運を見守る事はもうできないのである。特に好きな短編である、まぶねの牡牛とロバはそれを顕著に感じる。そしてどの短編でも、少なからず不幸な人達が出てくる中、天上界の恋人たちはまだ救いがあったように感じる。静かに語りかける欲に対しての扱いが非常に上手く、それが幻想世界に溶け込んで混ざる様は、見とれてしまうものだった。2023/04/29