出版社内容情報
井出義光[イデヨシミツ]
著・文・その他
内容説明
一九世紀半ばのアメリカは、奴隷制度を争点として、南北分裂の危機に見舞われていた。建国以後、最大の危機の時代に大統領になったリンカン。彼の名を聞くとき、「奴隷解放の父」という言葉を思い浮かべる。だが、実際の彼は、奴隷解放よりむしろ連邦の維持を重んじていた。彼の真髄は、強烈なナショナリズムにあったのである。本書は、リンカンが、アメリカの理想の実現と南北の分裂の危機という難しい現実問題にどのように対処していったかを、その実像を求めて人間くさく描いた力作である。
目次
1 悲しみの旅路
2 政治家をめざして
3 南北対立の激化
4 大統領への道
5 南北戦争その一
6 南北戦争その二
著者等紹介
井出義光[イデヨシミツ]
1929(昭和4)年、静岡県に生まれる。東京大学教養学科卒、同大学大学院修士(西洋史)課程、フロリダ大学博士課程修了。Ph.D.日本女子大学教授、立教大学教授、筑波大学教授を歴任。筑波大学名誉教授。アメリカ史、とくにアメリカ南部史専攻。2011年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ジュンジュン
4
「奴隷解放の父」という神話的英雄像を取り外して現れた姿は…とても人間的で魅力的な政治家リンカンだった。南北戦争というアメリカ史上最大の危機を克服していく過程は"偉大な"大統領の名に相応しい。だが、「奴隷解放の父」のベールが剥がれてもなお神格化されているのはなぜか?西部開拓のフロンティア精神(彼は西部の丸木小屋で生まれた)と、自由と平等を追求する共和制の理想(彼は連邦維持を至上命題とした)とが、融合してアメリカ的価値観を生み出した。リンカンはそれを具現化した、象徴した存在として永遠の生命を持ち続けている。2019/12/18