内容説明
一七世紀中ごろのヨーロッパは、全般的に危機の時代であった。この危機を代表するのが、ヨーロッパの片隅の島国イギリスで勃発したピューリタン革命である。チャールズ一世の専制支配に抗して、イギリスの国民は議会を中心にして立ちあがった。こうした激動の日々は、田舎紳士にすぎなかったオリヴァ・クロムウェルを、この革命の指導者に鍛えあげた。クロムウェルにひきいられ、「神の支配する国」の到来を信じて戦った「聖者の軍隊」が、イギリスに、また近代ヨーロッパに残したものは何であったろうか。本書は、クロムウェルの思想と行動を通してそれを解明する。
目次
1 地方から中央へ―革命前のクロムウェル(嵐を前に;専制支配のもとで)
2 聖者の進軍―議会軍とクロムウェル(騎兵隊長クロムウェル;ニュー‐モデル軍の誕生)
3 革命の頂点―平等派とクロムウェル(軍隊と政治;第二次内乱から国王処刑へ)
4 議会軍総司令官―共和政とクロムウェル(共和政の成立;アイルランドとスコットランドの征服;共和政のたそがれ)
5 ロード‐プロテクター―独裁者クロムウェル(指名議会の実験;剣の支配)
著者等紹介
今井宏[イマイヒロシ]
1930(昭和5)年、大阪に生まれる。東京大学大学院博士課程修了。東京女子大学名誉教授。近代イギリス史専攻。2002年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ロビン
15
イギリス君主政に風穴を開けたオリヴァ・クロムウェルの評伝。ピューリタン革命はどこか明治維新の権力交代にも似ているという印象である。日本の統治に天皇が必要なようにイギリス人には王族が必要だった、しかしクロムウェルが王を名乗ることへの反発もある、そのために実質は国王のような「護国卿」というものを作って就任した。革命も民衆というよりは中産階級主体の一種の権力争いであり、クロムウェルは独立派の利益を代表していた。アイルランドでの虐殺にまで「神」を持ち出して自己正当化するのは、まるで十字軍のようでいただけない。2025/02/28
ジュンジュン
6
1000年続くイギリスの君主制が唯一中断した10年間を担ったのが、オリヴァ・クロムウェル。独裁者か、狂信者か、日和見主義者か、それとも英雄か、評価が定まらない彼をピューリタン革命のなかに位置づける。革命が進展する過程で次々と仲間を切り捨てていった末、最後は護国卿に。死後墓があばかれ首をさらせれる末路は…せつない。2020/01/07
にゃんにゃんこ
0
面白さ452020/11/30