内容説明
一五世紀のはじめ、二九年間に七度も大船隊を率いて、東南アジアからインド・アフリカ東岸にまで及ぶ広い海域に活動した鄭和の事績は、人々を驚かせる。しかし、それは規模の大きさや華々しさのみで注目されるべきものではない。八世紀の唐末以来、時代をおって発展してきた海上貿易の歴史を前提としてはじめて、大航海はなりたつ。「大航海時代」以前に、東・西アジアの二つの世界は、海路でつながっていた事実を、見逃してはならない。本書は、当時の航海術や造船技術にもふれながら、鄭和の事績をイスラム新史料にも目をくばりつつ書き下ろした労作である。
目次
1 海のシルクロード(唐宋時代;モンゴル時代;明王朝の成立;成祖の治世)
2 中国人の海から(宦官鄭和;爪哇国と古里国;暹羅国と柯枝国;満刺加国と錫蘭国)
3 アラビア海をこえて(蘇門答刺国と忽魯謨斯国;溜山国と阿丹国;木骨郡束国と卜刺哇国;天方国と榜葛刺国)
4 大航海のあとに(大事業を生みだしたもの;「鄭和航海図」;西洋取宝船;鄭和以後)
著者等紹介
寺田隆信[テラダタカノブ]
1931(昭和6)年、兵庫県姫路市に生まれる。京都大学文学部、京都大学大学院文学研究科卒業。東北大学文学部教授などを歴任。京都大学文学博士。2014年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ジュンジュン
4
大航海時代の前に忘れ去られた鄭和の大遠征。本書では永楽帝の個性に帰するのではなく、連綿と続く海のシルクロードの延長先にこの壮挙を位置づける。また動機は朝貢体制下での貿易促進と推察。鄭和を再評価しようとする著者の想いは強く感じるものの、考えには承服しかねる。発展してきた海上貿易の到達点にしては、鄭和以後パタッと途絶えている。むしろ、永楽帝の強烈な個性による国威発揚としたほうがしっくりくる。2020/04/23
naoto
1
意外としらなかった、鄭和。あまり伝えられないし、本も少ない気が。大航海時代の前で、世界初の大航海者なのかも。インド洋のみだったようだけど…もっといろいろ知りたい。2019/06/06
naoto
0
4年前にも読んでたらしい。全然気がつかなかったってことは、全然身についてないんだな。歴史に残る鄭和艦隊、しかし中国ではあまり資料などないらしい。鄭和の後は明は内向きになり、鄭和を継ぐ人も出てこなかったらしい。さて今回はちゃんと身についたろうか?2023/03/29