出版社内容情報
高橋 昌郎[タカハシ マサオ]
著・文・その他
内容説明
福沢諭吉は、思いのままにその生涯を送り、満足しつつこの世を去ったといわれる。この諭吉の死に対して、当時の内外の新聞はこぞって弔詞を掲げ、衆議院は空前の院議としての哀悼の決議を行った。こうした事実は、諭吉に対する同時代人の評価を直截に示すものであろう。しかし、現在から、改めて近代日本の栄光と悲惨のなかに諭吉をおき、その全体像を鳥瞰するとき、同時代人の評価とはおのずと異なってくる。本書は、宗教との係わりを重視しつつ、諭吉の既成像を一新しようとする。
目次
序章
1 中津藩士として(「日用の学」;蘭学修業)
2 外遊と著述と(最初の渡米;貪欲なヨーロッパ行;翻訳と著述;二度目の渡米と『西洋事情』)
3 啓蒙と出版と(維新前後;『学問のすゝめ』の意図;出版業者として)
4 慶応義塾と彦次郎と(慶応義塾の設立;『学問のすゝめ』と宗教観;諭吉の分身)
5 列強に伍して(宗教について;軍備拡張のために;晩年の諭吉)
著者等紹介
高橋昌郎[タカハシマサオ]
1921(大正10)年、群馬県高崎市に生まれる。東京大学文学部国史科卒業。日本近代文化史専攻。元清泉女子大学教授。2016年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ジュンジュン
12
「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」で有名な”一万円の人”は、終生権力に阿らない独立不羈の人…だったら格好良かったが、実際はそうもいかない。金策に奔走したり、政府に迎合したりと「独立自尊」を標榜するには、伊達や酔狂では務まらない。ジャーナリスト、教育者など多方面で活躍した、当代随一の知の巨人なのは間違いない。ただ、どんな偉人も生きた時代の制約から自由ではいられない。福沢諭吉もまた然り。彼の先進的思考の根底には、紛れもなく”明治人”のそれが底流している。2023/01/05
Masa03
1
意外に人間味ある。 まぁ、生い立ち的にとにかくこの人は偉いと刷り込まれてきたので(笑)、著作や演説など高所から言ったこと、書いたことはいくつか読んだものの、適塾や咸臨丸の話以外、人間、福沢諭吉のエピソードはあまり知らずに来た。 その点、本書では維新後の、ある界隈(笑)では半ば神格化に近い扱いをされている時期についても人間味あるエピソードが描かれており、個人的にはなかなか面白かった。2024/12/05