出版社内容情報
板東洋介[バンドウヨウスケ]
著・文・その他
内容説明
『春琴抄』や『細雪』など、日本の古典の記憶に裏打ちされた豊潤な美の世界を描き続けた谷崎潤一郎(一八八六~一九六五年)は、当時“無思想”の作家と評された。日本の近代文学が青年たちの「いかに生きるべきか」という問いを軸に展開する中、谷崎は終始女性の美のみにこだわっていたからである。しかし谷崎は日本思想史の中できわめて重要な位置を占めている。『源氏物語』の影響下にあるその作品には、本居宣長の「もののあはれ」の感性の哲学が流れこんでおり、また一高・帝大時代の盟友であった和辻哲郎の倫理学と谷崎作品とは軌を一にしつつ、ある地点で決定的に岐れる。さらにその作品に顕著な母性崇拝は、折口信夫が説いた「妣が国」への憧憬とも源を同じくしている。谷崎の「思想」とは、個性や道徳よりも一人の女性の蹠(あしのうら)にこそ至上の価値を見出すようなエロスの哲学である。本書は宣長・和辻・折口を補助線として、谷崎の「哲学」を浮き彫りにする。
目次
第1章 出生と「少年」のころ
第2章 「煩悶」なき青春とニーチェからの出発
第3章 「悪」の形而上学・人間学と母の死
第4章 日本回帰と円熟
第5章 戦火の中のみやび
第6章 夢の円寂する時
著者等紹介
板東洋介[バンドウヨウスケ]
1984年、兵庫県に生まれる。2007年、東京大学文学部(哲学専修課程)卒業。現在、皇學館大学文学部准教授。著書『徂徠学派から国学へ 表現する人間』(ぺりかん社、第41回サントリー学芸賞)。論文「和歌・物語の倫理的意義について―本居宣長の「もののあはれ」論を手がかりに」(『倫理学年報』59集、日本倫理学会和辻賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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小谷野敦
んぬ
8
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- 和書
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